□月 ●日  No1823 大音量

命蓮寺に轟音が響き渡る。
皆が異変かと騒ぎ立てる。あそこでキョンシーが轟音のあまりひっくり返っている。
体をびくびく痙攣させて見ていられない。
こっちは耳栓を付けて原因を探る。 まあ原因はだいたいわかる。


幽谷響子だ。彼女の能力の一部に音量増幅がある。
おかげで彼女は引っ張りだこだ。祭りの時は毎日出張って祭り囃子の音量増幅をやってきた。
異変は疲れた彼女の周辺で起こった。
周囲はいったい何の音だと思ったが、私にはすぐに分かった。
掃除機の音だ。


幽谷響子 最近幻想郷にやってきたという妖怪の一人である。
あまりに最近やってきたので顕界とのギャップに苦しんでいる。
一例からすると掃除。やっぱり電気掃除機の便利さになれてしまったようで、
ほうきでの掃除は修行の一環といえど本人にとっては相当苦痛のようだ。


で、どうしたのか?
なんと掃除機を香霖堂で買ってきたようだ。電源はどこからとったのか分からないが
数日前からこの寺には調査機器が多数持ち込まれているのでそこから電源を取ったというのが
妥当では無かろうか。
幸い大師様がいない日で騒ぎはそれほど拡大しなかったが、この音量は大迷惑そのものである。


結局やめさせることにした。もちろん彼女は不満顔だがこんなことをして博麗の巫女が
出張ったりでもしたら殴打拘束監禁洗脳されることは目に見えて明らかだ。
鵺が博麗の巫女の危険性をとくとくと説明したら彼女の顔が青くなっていた。


これでようやく静かな寺になるということで次の日。
やってきたのは苦情だった。聞けば、この音で目が覚めるのになんてことをしてれたんだという。
本気で頭が痛くなった。


仕方ないので、代案を検討。 一輪女史に話をして事の次第を相談。
結論はこちら 経文を読むというものだった。 相談したのが間違いだった。
かくて、朝、大音量で経文を唱える幽谷響子の姿が毎日見られるようになったのだが
慣れというのは恐ろしいもので、それがなければ起きられないという困ったファンが
出現しだしたのは別の話。