□月 ●日  No2047 河童の秘薬


河童の手癖の悪さは結構知られているものではあるのだが、
月面から持ってきた強力な皮膚組織回復を目的とした軟膏が無くなったときは色々と
大騒ぎになった。


この薬、巷では「蝦蟇の油」とも言われている。刀の切り傷も一発で治ると言うが
傷の治療だけでなく、破傷風などの感染症対策になるということで臨床試験をするという
矢先の出来事である。 しかも犯人はこれまた誰かに譲渡したということで、
とうとう追跡不能になってしまった。


霧雨のご息女の話を聞くまでは。


虎と喧嘩して怪我をしたという話を聞いたとき、関係者はみんな肝を冷やした。
仙人のところにいる虎ははっきりいって、下手な妖怪よりもずっと頭が良いため
きっちりと手加減もしているのは分かっているし、実はこちらにも連絡が来ていたのだが
彼女のことだから治療を怠っているのではないかというのが心配だった。


そんな彼女の腕があっという間に治療されたと聞いて、軟膏の話になるまで
少々の時間が掛かった。
河童の軟膏と聞かれると、だいたいどこか渡来の代物って事になる。
腕を切ると手に入るというが、あれはどちらかというと罠にはまって怪我をしたパターンが多い。
それくらい河童は手癖が悪い。


さて、この河童の軟膏を手に入れた人物は特定したのだが、
その人の話を聞いたら大変興味深い内容を聞くことができた。
また治療内容やその後の経過を見ることができたのでよしとしよう。
薬はちょっとばかり補充しておいた。
その人物が目を白黒させていたのが妙に印象的だった。