□月 ●日  No2612 幻想郷は亡命先ではありません


 我々にとってもっとも困る外部からの依頼というのが、何か物を持ってきてくれというより
 誰かを匿ってくれというものである。 幻想郷を高飛びの場所ってことにしたいのだろうが、幻想郷にいたほうが
 よっぽど危険であるというしかなく、対応に苦慮している。


 かつてはこうした依頼が数多くやってきた。
 幻想郷と顕界の食生活にあまり開きがなく、あっちに行ってもそれほど生活環境に問題がないという
 ことでそのままあっちで農業を営むという話が数多くあった。
 このへんが所謂「幻想入りの物語」として顕界に広く流布するようになった所以でもある。
 彼らは概ね拉致で移送するので、外からは気が付かないうちに幻想の世界に足を踏み入れたとなる。


 極稀に隙間を用いた移動手段があるが、大体の場合は移動したことを察知されないために
 そんな大掛かりな移動方法は取らないのが普通だ。
 あくまで物理的に移動したと感じさせることが幻想郷の存在を覆い隠す最も有効な手段なのである。


 話を戻すと、こうした話はもはや過去のものだ。
 今はその気になれば色々な方法で情報伝達できる時代であり、こんなことをすれば
 幻想郷の存在が明るみになってしまう。
 しかし、それでも幻想郷送りへのニーズはそれなりに多いのが事実である。
 リスクのほうが多いことや生還率の低さをある程度盛って提案しているものの
 この辺の発想は残念ながらなくならないのが実情だ。


 なお八雲商事のケアなしに幻想郷に行きませんかと言われたら
 多くが餌目的なので行かないようにしていただきたいと思う。