○月 ▼日  No204 春の風景


ある植物の運び出しに追われる。その植物とは南天である。
南天といえば「難を転ずる」を意味する赤い実をつける植物である。
一般に風水の世界では鬼門と呼ばれる場所に植えることで
家に対する災厄から身を守る効果をもつという。
もののいわれが重要視される幻想郷では「南天」はとてつもなく高値で取引される。
そして南天の植え替えの季節がこの時期なのだ。
ちょっとした妖精避けになるらしいが、実態は妖精が南天の実に気をとられるか
実を飛ばしたりして遊び始めたり食べたりで結果的に家が無事ですむということらしい。


南天に限らず春となると田植えなどのシーズンが始まるとあって、そうした農耕具の発注件数が跳ね上がる。
化学薬品も使わない幻想郷だが、米に関しては外の世界の品種改良された米を使っていることは
あまり知られていない事実である。
幻想郷の食料自給率の維持のためになくてはならないということで特別に隙間妖怪の許可を得て
河童が提供した稲ということで広めている。
ムラではこの時期になるとお囃子で大いに盛り上がる。 
田植えは、幻想郷におけるお祭りのひとつなのだ。すると妖怪や妖精たちがそれを見て
一緒に踊りだす。 これは幻想郷でしか見られない奇妙な風景と言える。
私がこの風景を見るのはもう三度目となるが何度見ても心が和む風景である。