□月 ●日  No968 浄化扇子


綿月姉から扇子を譲って貰った。
なんでもこれで隙間妖怪を黙らせたらしい。
そんな強大なリーサルウェポンを譲るとは一体何を企んでいるのか正直悩んだ。
とりあえず扇子を広げてみたら、途端にものすごい臭いが広がった。
ビニール袋に二重で閉じて封印した、 出来れば燃やしたい。


何故扇子が臭うのか。 臭いの主成分はメタンらしい。 
そうこれは汚物の臭いそのものなのだ。では月人が汚物を出すことが有り得るのか。
ぶっちゃけると月のトイレは全く臭わない。
臭いの主要因となる発酵や腐敗が起らないからだ。
よくうちの人間が輝夜姫はうんこしないと言っていたが、どうやら当らずとも遠からずのようだ。
臭いがなければ汚物と認識しにくいのである。


月の都であっても排泄物から完全に開放されているわけではない。
桃だって食べれば排泄物が出る。
そこでそれらを処理するのだが、月の都には浄化槽というものがない。
バクテリアに食べさせて処理することは穢れた行為として捉えられているからである。


そこで月の都には素敵なアイテムがある。
それが扇子の姿をした浄化装置だ。 分子のレベルで汚物を消去することができるらしい。
範囲を広げればそのまま武器としても使えるので便利だが、実際の使い道はゴミや汚物処理という有様だ。
まあこれで森を浄化と言われたら隙間妖怪も降参するしかないだろう。
幻想郷の土地を排泄物と同じと言われるのは腸煮える気分だったに違いない。
恐らく、この扇子は地上に持って行ったものではないかと考えられる。
地上に滞在する時間が長すぎて、雑菌などをもらった結果こんなに臭うようになったと推測される。
さて問題はこれをどうするかだ。捨てたら制裁が怖そうだ。


とりあえず技術部の連中に譲ることにした。
何故か家宝にすると言っていた。 本気なのだろうか。
綿月姉の困惑した表情が頭に浮かんで苦笑した。