無縁塚より通報があり現地へ急行。 移動途中に渡されたのは細菌防護服だった。
無縁塚の連中は概ね幽霊のためこれらの服は要らないというのだが、今回やってきたのは相当厄介な
代物のようである。
現地に到着すると、細菌防護服に身を包んだ連中があちこちで写真を撮っていた。
さらに、幾つかの部品を袋に詰めていた。 聞けばそれはフライトデータレコーダーとコクピットボイスレコーダーで
あるという。そう顕界で航空機事故が発生し、どういう経緯か知らないがこの幻想郷にやってきた。
すなわち残骸が見つからない状況だったということである。
では何故細菌防護服を着ないと駄目なのか。無縁塚はテープと御札で封鎖され、バイオハザード
すなわち生物災害認定地域にされていた。 燃料と遺体が混ざってしまい大問題になっているのだという。
こうなると妖怪ですら処理困難となる。
通常なら、自然のサイクルで遺体を処理するか、即埋めるのがルールだ。
ここから感染症が広がるのを防ぐための基礎ルールである。
さすがに無縁塚にいる連中も基本もと人間だ。人間が朽ちていくのを見るのは流石に
創作活動もとい精神に応えるのだろう。たぶん。
遺体は、一度現地法人の特設会場に持って行くことになった。 どうやら細菌防護服に身を包んでいる
人は航空会社の社員らしい。 幻想郷の存在を知る数少ない面子である。
ここからフライトレコーダー フライトデータレコーダーを用いて事故原因を探ることになるのだが
それは別の分野の仕事となるだろう。
今回私は監視役として駆り出されたが、このようなケースも幻想郷では発生することがあることを
思い出させてくれた出来事であった。