□月 ●日  No4393 たわけ


 我々八雲商事社員にとって通信とは命綱である。
 通信が途絶えると、いろいろなものが不可能になる。
 特に無限コンティニュー周りでチェックサムと呼ばれる処理に
 不具合が生まれることがある。 これはどうも中有の道に飛ばされる際に
 体のバックアップを生成するためのものだそうで、実際にはかなり
 端折っていることが知られている。 たとえば病気が治ってしまう。


 四肢欠損が治ってしまう、などはその好例である。
 つまるところ本当のところ本当の自分には戻っていない。
 が、社員に文句は出ない。そりゃそうだ。
 不具合もみんな改善されるのだ。


 たとえば持病を抱えている場合や透析なども不要になる。
 こうなるともはや無理して自殺したほうがマシってレベルになる。
 なんだそりゃ状態である。
 ところがそれ以外の重要情報、というのが問題で
 死亡時に自分が同期して復活できるようにする処理で
 遅延等が起こる場合がある。


 すると自分の意識の行き先を見失う場合があるんだとかなんとか。
 よって通信は重要なんだと。 我々が月面戦争に駆り出されないのは
 当然の流れである。そうでなきゃ捨て鉢戦術でいくらだって
 ダーティボム投げ放題である。


 このように通信設備の不具合があるとシャレにならない我々にとって、
 変な通信機器を納入してくる会社は敵である。
 そりゃもうものすっごいヘイトがたまるってことをご理解いただけるだろうか。