■月 ●日  No5127

 魂魄は再び嘆息した。
 このコスプレ魔術、男物衣装でぴんと着て色々調べた結果わかったことがある。
 衣服の90%は魔術の役にも立ってないという事実だ。
 つまるところ多少どころじゃないアレンジを加えてもきちんと機能するのだ。
 もちろんこれには幾つかの例外はあるのだが、大半はこれでよいのである。
 というより魂魄が実務で戦闘するならそれで充分である。

 そもそもこんなコスプレ魔術を使用するメリットなんてないのではないかとも思う。
 もちろん効率を重視するなら決して無駄ではないことは間違いない。
 朝倉は継戦能力を重視するので、少しでも魔力を温存したがる傾向がある。
 回復系魔術から肉体強化など徹底的な下準備をかけている。
 いや、もしかすると、コスプレ魔術のAPIは完全ではないのかもしれない。
 もっとも不完全だからこその利用価値はある。
 無料での着替えシステムと考えればよいものなのだ。だから適当にレポートを書いて
 当面この魔術を使うつもりである。
 
 ふたたび朝倉。
 朝倉は現在困っている。顕界で発生した異変で混怪が開催できていない。
 開催しないと情報交換が難しくなるのだ。
 普通のオフ会やオンラインによる情報交換もなきにしもあらずだが
 正直効果は薄い。例えば会話の代わりに匂いで会話をする妖怪なんかが
 いるのだが、直接対面しないと情報交換が困難な妖怪はごまんといる。
 重要なことはこのイベントでは人間が均質化されることだ。
 溶け込むのも容易である。
 
 そしてなにより、今年の新作を見せることが出来ないのが問題である。
 こいつのために余計にかけている予算はこのイベントで取り返す予定だった。
 だがそれが難しくなった以上、かくなる上は損切りまたは、自らオンライン
 生放送しかないとも思う。色気路線でいけばまだいけると思う。
 
 まあ彼らの思惑は配信用蛍光ランプを購入しようとする朝倉と魂魄の発見により
 発覚するのだった。