■月 ●日  No5159

 基本的に八雲商事社員は傍観者である。特殊事例以外は異変に
 直接関与しないものだ。しかし巻き込まれてしまったらその限りではない。
 そしてよりによって見つけてしまった。雪に埋もれた人間のかたちを。

 こうなると何とかして掘り出さないといけない。
 救援も呼ぶが、まずは呼吸を確保し、生存の可能性を
 向上させるのだ。まあだいたいは死体での対面であるが
 しかも今回慌てて掘り出さないといけない理由があった。
 その衣服はあきらかに顕界のしかも公権力にいる者の衣服だったからだ。
 つまりは警察である。婦警である。
 掘り出して、送還して普通に業務上の死にしないといけない。
 こうした引き渡し事例はたまに存在するが巻き込まれたのは初めてだ。

 途中まで掘り出したところで違和感に気づいた。呼吸をしている様子はない。
 つまり仏さんってことである。しかし、この婦警は突然目を見開き、
 指を動かす動作を始めた。反対側の腕はすでに動き出している。
 「あっ、これダメな奴だ」

 本社への報告をしようと、仏さんから目を離した。端末に連絡の
 動作を行い、電話口に仏さんの特徴を確認するため埋まっていたで
 あろう場所を確認すると 仏さんはいない。
 「やっちまった」
 これは掘り返してはいけないものだった。周辺を確認して婦警
 だったと思われる人型物体が何処に行ったのかの目視する。 
 そこに。

 「端末通信エラー、通信端末のテザリングを要求します」
 さっきまで埋まっていたはずの婦警が目の前にいた。

    

 

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