△月 ◎日 No 087 高天原のはなし


主に超新星爆発を観測するX線衛星が何者かに破壊されてしまったらしい。
月に棲む知的生命体の仕業とも目されたが、我々の間では妖怪たちが悪戯で落としたと言う説が大勢を占めている。


結界の外でも幻想郷でも沢山の人工衛星が飛び交っているのは半ば常識になっている。
衛星を利用するのは主に河童や天狗たちで、使用周波数帯は違うがGPSサービスなどもある。
容疑者は鬼娘かヴァンパイアの姉妹のうちのどちらかであろう。


我々は幻想郷外宇宙を高天原と呼んでいる。これは顕界宇宙と区別するために便宜上つけた名前である。
高天原を飛び交う衛星はもうひとつ重要な目的を持っている。 それは月の観測である。
月ウサギたちの通信内容を盗聴して復号するなど様々な任務を帯びている。
月は我々の観測行為を下賤な民の無礼な観測行為と思っているだろうと思ったら
つい最近まで我々の観測行為は月への攻撃だと思われていたらしい。
月への野心がないメッセージとして敢えて月とは無関係のプロジェクト名を冠したにも関わらずである。


ただ、報復内容がミステリーサークルなどといったしょうもないものばかりというのは情けない。
過去に米帝KKK団なるものが白装束を着ていた理由が、黒人が幽霊だと勘違いして怖がるだろうという
これまたどうしようもない理由だったりするのと同じ訳だ。


ボスに言わせれば、月人に舐められていたほうがまだよいという。 直接的な驚異と思われて
攻撃を受けるよりマシというわけだ。 
相手を優位と思わせて思いのままに操縦するとはボスらしい考え方である。