▼月 ■日 No 128 去るものは追わず


紅魔館に派遣されて一時は人事不省の重態になったあと退院した同僚が自主退社した。
もう今の会社でうまくやれる自信がないという。 会社を辞めた後あてがあるのかと聞いたら、
とりあえずしばらく静養するとのことだ。
有給休暇を消化する間に新しい勤め先が見つかればよいのだが。
ボスは多少の便宜は図ると言ったものの、再就職先の身元調査で「病気のためにやめた」とか
適当な理由を述べる程度なのだろう。 
幻想郷でメイドさんにやられましたとあっては彼の再就職は不可能に近い。
彼がいなくなっても会社は回り続ける。 回らない会社はそれはそれで大問題である。


紅魔館でも彼の話題は一度も上がらない。 彼は元気とも聞かないからあまり評判は良くなかったのかもしれない。
私への対応は相変わらずだがヴァンパイアの姉妹の態度はかなり軟化した。 
冴月の一件以降、自分の望みは叶えてくれるとわかったのかもしれない。
保険証を返しに着た彼は、今までの雰囲気とは打って変わって遊び人の風体になっていた。
もう彼とも会うことはないだろう。


一番きつい一言が飛び出したのは北白河だった。 自分の仕事を最後までできないのは駄目だと言う趣旨だったと思う。
それは彼女なりの優しさかもしれない。 岡崎は北白河を窘めたが、どちらかと言えば去る人追わずの考えだったと思う。
朝倉は余り面識がないためかお疲れさんと言っただけ。 冴月に至っては無視である。 それもそれで酷い話だ。
かくいう私も、がんばれよとは言ったものの、彼の心に届いたのかは正直疑問である。