○月 ○日 No 127 妖怪に予防接種


霊能局 政府お抱えの組織で風水やら魔法やらで国に対する災いを回避したり、
重要人物の寿命を引き伸ばしたりする人たちのこと。
彼らとは正確には敵対しているのではなく、緩やかな同盟状態にある。
そのメンバーの一人"小兎姫" まず間違いなく偽名だろうが
今日は私も小兎姫も難しい顔をしないといけない日である。


それは予防接種の段取りだ。 
普段はテリトリー争いでいがみ合う両者だが、ここでは仲睦まじい譲り合いが起こるのである。
費用が問題ではない。 まず予防接種の重要性を説明しないといけない。
人間でも嫌な注射を妖怪たちがいいというわけでもなく、挙句は人間が妖怪に危害を加えようとしているという
デマを流されてはボイコットされると言う風景があちこちで見られる。
これらの風景は傍から見ると美少女がお注射いやあと言っている状況と変わらないため、
まれに事情を知らないアホな男が勝手に間に入ってわけのわからないことを言い出したりすると
思わず暴徒鎮圧弾をぶっ放したい気分になる。
残念ながら、お前が入っても恋愛フラグは立つことはないのだから諦めてほしいものだと
声には出さないが心で叫んでいる。


この貧乏くじ争奪戦に、厚生庁は傍観しているときている。 本来だったらお前のテリトリーのはずだ。
狂犬病の予防注射をするくせに、妖怪だけは特別扱いなのだ。 まったくもって納得いかない。
それは霊能局も同じである。 ただでさえ彼らは胡散臭く思われているので、
こういうときこそ組織の力を見せ付けるときだと思うのだが、前回も色々と揉めまくったから
出来るだけ面倒なことは我々に押し付けたいというところなのだろう。


ボスが妥協案を提示して修正して、決まる。 おおむねこのやり取りが丸一日続いた。
最後のほうでは私も"小兎姫"も憔悴しきってしまう。
その後、うちの会社と霊能局の間で魂魄主催の合コンが開かれるが、そこに私と"小兎姫"とボスの姿はない。