□月 ★日  No554 黄昏酒場で銃撃戦


幻想郷の中でも外でも妖怪たちはお酒が大好きである。
そんな妖怪たちの胃袋を満たすため、会社勤めの妖怪たちのストレス解消のため存在しているのが
黄昏酒場と呼ばれる酒場群である。 
もっぱら妖怪たちや、うちの会社のOBによって経営されているこの酒場は
結構儲かる反面トラブルも絶えない。


人間も妖怪も酔っぱらえばやることはあまり変わらない。
大きな声でわめいたり、酷い場合は喧嘩を始める者もいる。
もちろん弾幕ごっこも展開されるときがあるのだが、外から見た人は花火を上げているように
しか見えない。


おつまみが美味しいという評判の店に立ち寄ろうと、何人か連れて酒場に立ち寄ったら
ばったり小兎姫たちと行き会った。 酒場内にいる美人局を検挙するらしい。
妖怪たちの中には手っ取り早くお金を稼ぐために売春を始めてしまう者もいる。
そういう妖怪たちを取り締まるのも霊能局の仕事らしい。 やっていることは警察そのものだ。
興味もあって物見遊山で取り締まり現場に同行することにする。
小兎姫としても目くらましに使えるということで同行に同意してくれた。


取り締まり場所は、うちの会社のOBが経営するビアガーデンだった。
通報したのはマスターらしい。 現場に着いたら、マスターの顔がこわばっているのがわかった。
面子に当然のことながら浅間がいるからだ。
霊能局のおっさん一人が囮で、他はみんなで酒宴である。
浅間は空気を読まずにピッチャーを頼んで、そのまま口に運んでいる。
小兎姫は私にいつもこんな調子なのかと聞いてきたが、彼女にしては抑えめと答えておいた。
ここまではよかった。


いざ捕まえようと女を拘束した瞬間、彼女のパートナーらしき男が襲いかかってきたのだ。
少量だが弾幕も放っている。 慌ててカウンターの中に隠れるとアフロのおっさんが
「改装資金ゲット」とつぶやきながら、拳銃に弾丸を込めていた。
どうやらそれほど珍しくない光景らしい。
戦況は声を聞いていれば分かる。 男の声で「なんだこの酔っぱらい女」と
小兎姫の声が鳴り響いているからだ。
戦闘は思いの外早く終わって、アフロのおっさんも拍子抜けしていた。


帰りがけ、小兎姫がやっぱり浅間が欲しいと色々な意味で問題発言をしていた。
出入り禁止にならなかったのが不思議でならない。
客も風物詩程度にしか思ってないようであらためて黄昏酒場のすごさに驚くばかりである。