○月 ○日  No254 冥界に行ったからって死んだわけじゃない


冥界に行くと戸籍上は死んだことになるのだろうか。
ちょっと不安になったので市役所に行って自分の戸籍を再確認する。
問題はない。
法務の人が「死亡届を出していないから死んでいることになってない」と言われて納得。
最近冥界やら三途の川やら行っていると、自分が生きているのか死んでいるのか
判らなくなるときがある。
もしかすると、仕事に行っている間気を失っているとか臨死体験をしているのだろうか。
これが境界を越えた人間のジレンマなのかと勝手に自己陶酔していたら、
岡崎に「ただの海外出張じゃない」と言われてしまった。


人間は簡単に死ぬようにはできていないらしい。
人間は酸欠状態に陥るとぎりぎりまで脳を生かすために
脳内麻薬を大量放出すると言われる。これが走馬灯の正体と言われる。
では私がいる幻想の世界とは麻薬が生み出したものなのかというと、
実際のところはそうではないことは日ごろの業務でわかっていることではある。


中有の道で死んだ人にホイホイ会っているせいで、葬式のときに涙がでない。
用があったら連絡すればいいや程度にしか思わなくなる。 
かなしいかな人の死に対して感慨が持てなくなっている自分がいる。
これは職業病としてはかなり深刻だと思う。
もしかすると、もはや自分は人間じゃなくなっているのかもと北白河に言ったら
「自意識過剰」と返されて苦笑した。