■月 ○日  No417 自称現人神ダウン


ボスの指示で妖怪の山に新しくやってきた神社の様子を見に行く。
神社の前で「すいません」と叫んでも何も応答がない。 
神社の廻りを一周してみたら生活感があることから、自称現人神の女の子が
ここに住んでいることは容易に推察できる。


誰もいないと思って帰ろうとしたら、中から見たこともないお姉さんが現れて
いきなり手を引っ張っぱられ中に連れ込まれてしまった。
中には床に伏せっている自称現人神の姿。現人神でも病には勝てないかなと思ったが
様子がおかしい。かなり衰弱した状態になっている。


看病しているお姉さんの話によれば、彼女の様子が変わったのは数日前のこと
その前からも食欲がなくなっているとは思っていたが、急に食べ物が喉を通らなくなり
ついには倒れてしまったらしい。
食中毒を疑い厨房に入ると、食べ物はそこそこ揃っているも外の世界の
調味料の類がすっかりなくなっていることに気づく。


うちの新入社員にも立ちふさがる壁「食生活の壁」である。
それだけ結界の外はたくさんの食べ物と「味」に満ちあふれているのだ。
私のように幻想郷の薄味の食生活に慣れきった人や味覚が鋭い人には問題はないが
一般の人たちには幻想郷の味はきついかもしれない。
現人神の脈を取ろうと手を触ってみたら、まるでおばあさんのように荒れていた。
恐らくご飯を炊くのも相当苦労したのだろう。
飯ごう炊飯器が外に置いてあったから多少の心得はあったのかもしれないが
少女がここに暮らすには幻想郷は不便すぎた。


電話で会社に医療スタッフを呼び出すことにする。 
軽度の栄養失調と診断された。 点滴が打たれ、とりあえず様子を見ることになった。
一緒にいたおねえさんは、ここ数日、飲めや謳えの大騒ぎで色々と料理も出ていたはずだと
言うのだが、恐らく天狗の食べ物と人間の食べ物はかなり違うと思う。
第一天狗の料理は辛すぎか甘過ぎの両極端だ。 お酒のおつまみにはいいだろうが
おそらく彼女の口に合わない食べ物が出たに違いない。
いずれにせよ、厄介なことになってしまったと思う。