□月 ●日  No787 妖怪と対等になるには


幻想郷で困った客は数多くいるが 鬼娘ほど扱いに困る奴はいない。
自分を棚に上げて相手を達観した視点で見ては相手の不興をかっている。
私は最初から諦めているが、他の社員が可哀想だ。
中には逆ギレしたり泣き出す人もいるそうで、実に気分が悪い。
本人は悪気がないからさらに質が悪い。
だが、彼女にも苦手なタイプの人妖がいるようだ。


それがなんと魂魄である。
鬼娘を正座させてなんと説教をたれているではないか。
年の功とも思ったが、明らかに鬼娘の方が年齢は上だ。
その理由は幻想郷という世界の特殊性にあると言われている。


岡崎の話をさせてもらえば
幻想郷の妖怪は社会参加を満足にしていないのである。
もちろん出店をつくる妖怪も居るし多くの妖怪は社会に溶け込んでいる。
だがそれは矯正されているわけではないのだ。


問題はそこからだ。
社会的な役割がないということはいつまでも子供でいられると言うことだ。
そして責任のないところで人間の成長もあり得ないと言えるだろう。
つまり、幾ら永く生きていても、いつまでも責任レベルが子供のままなら
結局いつまでも子供のまま生きることになるわけだ。


これはヴァンパイアの主人でも顕著だ。
彼女は確かに数百年生きているが、幻想郷の中では割と若輩である
にもかかわらずカリスマの異名を持つのは彼女が主人としての行動と
気位をもっているためと言えよう。


幻想郷では外見は当てにならないが、少なくても大人の外見になれば
大人の責任が押しつけられる。
結果、魂魄の社会的責任という謂われが鬼娘を凌駕する結果になったと言える。
鬼娘が迫力に毛脅されてしまうのはある種当然のことだろう。
実際、人間が鬼と交渉できてしまったのもこのことによることが大きい。


ちなみにだが私だったらどうなのかと鬼娘に問うたら
100年早いと言われた. 鬼の永い年齢を鑑みれば微妙な数字と言えなくもない。
なんとも複雑な気分だった。