□月 ●日  No868 謹賀新年


年末だというのに相変らず仕事。
止まってはいけない仕事だと分かっていても帰省できないのはかなりつらい。
もっとも帰省しても親戚にお年玉をあげることを考えれば結構美味しいとも言えるかも知れない。
幻想郷で年越しというのも悪くはないだろう。


阿礼乙女のところに行くと、明羅女史達がおせち料理の準備をしていた。
そもそもおせち料理とは新年で世間のシステムが麻痺している時に
日持ちする食べ物を用意するのが目的である。
ところが幻想郷でおせちというと随分と様相が異なる。
海産物が殆ど手に入らない幻想郷ではおせち料理も相当バリエーションが制限されるのだ。
たぶんあまりの種類の少なさに驚くだろう。


新年と言ってもはっきり言って不便極まりない。
顕界では最低限の店は開いているしインフラもしっかりしているのだが
幻想郷ではそうはいかない。 店は殆どしまっているからもし何かが不足したら
お隣さんから貰ってくるしかない。 これはかなり恥ずかしい。


自称現人神が久々に里で買い物をしていた。
リヤカーを引いて重そうな荷物を載せている。
後ろを例の神社にいるおねえさんが押している。威厳もなにもあったもんじゃない。
お前も押せと言われて手伝わされる。
鬼娘がいなかったら今頃くたばっていただろう。


人形遣いのアリスが会場設営をやっていた。
人形がてきぱきと舞台を組み立てている。 それ自体が見せ物に見えるのかおひねりが飛んでいる。
本人に言わせるとかなり収入になるそうで、かなり必死のようだ。
飛んだおひねりを身なりの悪い悪童どもが奪っている。
人形が棒で叩いて追い返す。そんなやりとりを観察して嘆息する。


新年でも一応うちの支部は開いているのだが、幻想郷の住民は休みである。
つまり我々が常駐する必要があるのだ、これが新年に休めない主な理由である。
もう因果な商売と思って諦めるしかない。
もう慣れたけどね。