フェムトファイバー。月の民が使っている奴で兎たちにも配備されている特殊なロープらしい。
高いところから移動するときにも使えるし、テントの設営にも利用できる。
そして何より神を捕縛することができる。 なかなか万能でよい。
フェムトファイバーは割と量産されているようで、その気になれば会社で借りることができるらしい。
使い方は普通の紐と変わらない。 言われないと気づかない。
里香女史が悪さを働いた妖怪を捕縛するのに使っていたと言う。
手錠とかを使うよりも安全に縛れるので重宝がられているそうだ。
第一手錠を使ったら容易に壊されてしまうだろう。
アホな技術部の面々がこれで妖怪を縛ってあんなことやこんなことをしたいとか言っていたが
そもそもどうやって縛るつもりだろうか。 紐そのものを遠隔操作する機能もないようなので
結局丈夫な紐程度の扱いだと思った方が良いみたいである。
面白いのはフェムトファイバーの縛り方が外の世界で使っているやりかたと全く同じだったことだ。
それは「南京縛り」と呼ばれている。 我々みたいに品物を輸送するときに、高く積み上げた物を
きつく縛るのに必須である。隙間妖怪を縛るときにも活用された縛り方である。
何故かと思っていたが、どうやらこの縛り方は罪人を縛るのに使っていた物らしい。
実際南京地方で悪さをした罪人を後ろ手に縛っていたのだという。
月兎たちに得意げに外と世界の縛り方と言って紹介したら
私もそうやってると言われてがっかりした。
ちょっとしたヒーローになれるかなと思ったが、月の縛り方と同レベルと考えればマシなのかもしれない。
借りたヒモをたぐり寄せてみると、注意書きみたいな物が書いてあった。
「お尻を拭いてはいけません」と書いてあった。
どうコメントしろというのだ。
嘘だと思いたい。 かなり切実に。
「まあ、戦闘状態では紙なんて期待できないからね」
里香女史の発言が思いっきり追い打ちに聞こえた。