□月 ●日  No998 私は一応少しは止めたぞ


うちの会社はたまに人間からの注文も受けるのだが、今日はそういう話。
妖怪たちを交えた飲み会を開きたいというので、一応許可を貰って注文を受け付ける。
何故かボスから金額はまけてもいいから前金で貰えと言われた。


止めはしないがそういう企画を立ち上げて妖怪と仲良くなりたいと思う輩はそれなりにいる。
美人の妖怪と仲良くなりたいのは気持ちとしては分かるが、個人的には自殺行為だと思っている。
自称現人神あたりでも釣れればと思っているが、彼女は我々の想像を遙かに超えてスレている事実を奴らは知らない。


鬼娘が起こした異変の時の注文書が残っていたので、これを加工して見積もり書を起こしたら
相手の顔が真っ青になっていた。 これでもお酒の額は原価から10%のせの大盤振る舞いだ。
ガロン単位で呑める妖怪たちだからこれでも採算がとれる。
全額耳をそろえて払えないというから、8割入金で勘弁してやった。


これだけお酒を飲ませてどうするのかと尋ねるとお持ち帰りしたいと言っていたので
とりあえずやめておけと言っておいた。 はっきり言うがお持ち帰りされるのはお前らである。
何処の誰とは言わないが必死な魔女とかに拉致られるくらいならまだマシな部類だ。
実際お酒に漬けた肉は軟らかくなっているので、たいていの場合は餌にされるのである。
勿論直接そんなことは言わない。 そんなことをしたら妖怪少女に恨まれる。


もっともこれでも幻想郷の方がまだマシだ。
顕界の妖怪なんかまず警察呼ばれて示談に持ってかれて金をむしり取られた上で
最後はばっちり喰ってしまう。 骨の髄まで喰われるから死体が残らない。
死体運び猫に運んで貰えば死体遺棄にもならないときている。
 

妖怪たちが会合に使っているイベントは要注意だ。
一見、男が女を持ち帰ろうとしているように見えるが実際は新しい餌を手に入れているに過ぎない。
突然いなくなったとしても家が無くなったと言えば最近はまともに捜索すらしてもらえない。
妖怪にとってこれほどパラダイスなこともない。


北白河が注文者の墓石を早くも注文していた。
実際かなりの確率でお世話になるので実に侮れない。
浅間がブサがお持ち帰りしようだなんて10年はやいよねと言うと皆がうんうん頷いていた。
岡崎がヴィヴィットの感情ログに「前歯折りたい」と書いてあったとぼやいていた。
薄ら寒い物を感じた。


で、お金は回収できたかって?
勿論中有の道できっちり回収しましたよ。
三途の川の渡し賃もなくなったが、まあいいだろう。
別に死神も突っ込まなかった。 全く問題は無い。