七草がゆの日。 妖怪人間問わず、水田に行って七草かゆの材料探しを行う。
七草といっても実際のところ食べられる雑草である。しかし、幻想郷の住民にとっては
貴重なビタミン源である。 顕界では美味しいものを食べたあとの箸休め的な存在として知られているが
幻想郷では野菜不足のカバー的な意味合いがとても強いのを忘れてはいけない。
くどいようだが、うちの会社がいくら物資の底上げをやったとしても
幻想郷内部は慢性的なビタミン不足に陥る。 この辺は結構深刻な問題となっている。
特別扱いしているごく一部の施設をのぞいては色々な方法でビタミン不足を補うしかない。
そんな折、メリーや蓮子、北白河といったうちの会社の女の子が最近よく命蓮寺の話題を口にしている。
新興宗教にでも嵌ったのかと少々心配したのだが、話を聞くと命蓮寺で出される精進料理に
嵌っているらしい。
そこまで言うならと思って興味半分でいただこうとしたら、動機が良くないと言われて
さんざん説教されてから貰ったのだが、とてもじゃないが美味しいとは思えなかった。
幻想郷の食べ物に慣れた私があまり美味しいとは思えないくらいだから相当だ。
それもそのはず、温野菜に醤油か塩で味付けしただけの食べ物を精進料理と呼んでいるのだ。
さらに食べられるものも基本托鉢で貰ったものばかりだから安定しているわけがないのである。
それをうちの会社の女性はヘルシーだと思っているのだから困ったものだ。
命蓮寺にとっての七草がゆはそれなりにご馳走扱いとなっている。
千年前の発想が抜けきっていない命蓮寺だが、七草がゆの存在はその当時からあったようである。
足りない分の大根だけを托鉢の形で(この辺がややこしい)提供し、それを皆でいただくようだ。
ちなみに白米の粥ではなく雑穀類の粥であるのでその点を勘違いするべきではない。
そんな命蓮寺だが新年は寅さんと鵺がもってきた幻想郷特化の妖怪用精進料理で大いに盛り上がったらしい。
ムラサ船長も現代の精進料理を紹介したら目を丸くして驚いていたようだ。
大師様は仏教の教えもこんなに変化するのかとびっくりしていた。
低カロリーヘルシーの代名詞の幻想郷料理も彼女たちに言わせればもの凄いご馳走であるというのには
驚きを隠せない。
顕界の食べ物を紹介してくれと言われたがつい脚色して話すしかなかったのは言うまでもない。
本当のことを言ったらショックで半殺しにされそうだからである。
当面食べ物の話題はNGとしておいて間違いないと思う。