□月 ●日  No1236 幻想郷でもよくあること


永遠亭の新年。と言いたいところだが病院に新年なんて単語はないらしい。
人里と深く関わるようになり、仕事も多くこなしてきている薬屋は年始も大忙しである。
こっちは備蓄薬品に限りがあるのに普段通りに物を注文するので色々大変である。
病院だから仕方ないと思って諦めるしかないだろう。


そして外の世界も幻想郷でもほとんど同様なのが喉に餅を詰まらせる人である。
餅は古くからの食べ物で幻想郷でも普及している。
大師様も知っているくらいの有名な食べ物だ。 
笑えるのは月の都でも餅を喉に詰まらせる者がいるという事実だ。
その場合は慌てず騒がず専用のカプセルを口に入れるとよい。
餅を喉の内部で切断して、呼吸を確保してくれるのだという。


さて、今日の患者は餅を喉に詰まらせた天狗である。
天狗の場合、呼吸器の違いから餅を喉に詰まらせても息はできてしまう。
しかし、食道は酷く荒れて、粘膜保護をしないといけないという。
呼吸が出来ると言うことなので河童製の小型掃除機で吸引して
粘膜保護材を投与して完成。 ほとんど外の世界のやりかたと同じだが、
胃カメラは初めてらしく、初めて見る身体の中に天狗も終始驚いていた。


天狗の話によると、昔は最悪の場合隙間妖怪のような空間制御型の妖怪に
直接餅を取り除いて貰っていたりしたという。 
また、博麗の巫女が使役するカミの中には、物体を空間の中に沈めるタイプの者も
いるそうで、それをピンポイント発動させて貰うなどもあったらしい。
鬼たちは自分のサイズをミクロサイズに変えて直接取り除くこともしているという。
まさにミクロの決死圏だが相手は妖怪だから別に珍しいってことでもない。


薬屋に来て皆が喜んでいるのは、そんな仕事は基本誰もあまりやりたくないということだろう。
体中、びしょびしょになって胃液の臭いにまみれながら詰まった餅を吸引するのはだれも
やりたくないのである。


余談だが、幻想郷での餅の食べ方と言ったら、あんこ餅やきなこ餅、焼き餅が主流だ。
海苔を挟んで醤油で食べると美味しいのだがこちらは海がない幻想郷だけにあまりポピュラーではない。