□月 ●日  No1456 命は投げ出す物


八雲商事現地法人、そこに馴染みのおばさんがやってくる。
彼女は八雲商事の社員でもない、霊能局の社員でもなければましてや現地の妖怪達でもない。
彼女は顕界の保険外交員である。 幻想郷で働く従業員に保険商品を売るエージェントである。


彼女は幻想郷の事情に合わせて我々に様々な保険商品を売ってくる。
その知識力は我々も一目置いている。 
たとえば、幻想郷勤務者だと生命保険料が異常に安い。仮に死んでも中有の路で回収できる場合があることを
保険外交員のおばさんは十分理解している。 


三大疾病の話もしておこう。 三大疾病とは 癌 脳卒中 心筋梗塞の3種類のことだ。
ところが幻想郷には薬屋がいるのでそのうちの癌は大きな脅威とならない。
一方で精神を破壊するに至る脳卒中や、脳に血流がいかなくなり結果的に精神を破壊される心筋梗塞
危険視されている。 


癌の治療費についても幻想郷は顕界と比較すると極端に安価だ。 これは薬屋が顕界での相場を知らないからである。
うちの中年社員が薬屋に、「ただの癌です直ぐに治ります」と言われてひっくり返ったことがあったという。
おまけに治療費はインフルエンザの治療費と大して変わらなかったらそうだ。 
そんなこともあるので、幻想郷住民用の場合は三大ではなく二大疾病に標準を絞って、その分
保険料が少し安いのである。 
ただし配偶者は三大疾病が適用されるオプションも存在する。 この辺はとてもややこしい話だ。


この保険屋のおばさん(もっとも年齢からすれば朝倉や魂魄たちとはずっと下であるのだが)
幻想郷の事情にとても詳しく、我々でしか知らないようなことも結構知っていたりしているので
これが本当に侮れない。
とある目撃談によればスペルカード戦もこなしているというので人間と言うよりは元々幻想郷に縁のある
人材がこの仕事をしているものと思われる。


この日もうちの社員に通勤用車両保険の説明などをしていたが、一年の半分を幻想郷で暮らしている場合は
運転特約がついて保険料が安くなるらしい。 
ためしに弾幕被弾保険はないですかと尋ねると、身代わり呪符があるから要らないでしょうとさらりと言われた。
幻想郷で商売をしているのは我々だけではないというわけである。