例の神社の収支報告を確認してふと疑問に思う一行を発見。
そこに書いてあるのは「借地権利用料」。額こそ大したことはないがしっかり取られている。
そう自称現人神が居るあの土地は一応他人の土地なのだ。
幻想郷の土地所有権は実は顕界のルールと基本同じであることに驚くばかりである。
そもそも江戸時代では土地所有権のルールがなかったが、明治時代になって
税金の徴収のために地租改正というルールが設けられ、土地の所有が認められるようになった。
博麗大結界の分離は、最初地券と呼ばれる証文による管理方法から
不動産登記簿による管理に変わったのを待って分離したという記録が
阿礼乙女の書庫の中から見つかっている。
なぜ、不動産所有権をわざわざ幻想郷内でも定めないといけないのか、色々疑問だったが
何人かの妖怪の話を聞いてその辺の事情が大方理解できたからここに認めてみようと思う。
文明開化の時代にあって、顕界に住んでいた既存の妖怪達は外国からやってくる新しい妖怪への
対応を余儀なくされた。
人間達は文明開化の名の下で、既存の信仰を失うのではないかという観測が妖怪の間でも流れ
神社仏閣の経営状態の改善のために合祀による統廃合が行われた。
しかしこれだけではパワースポット周りを保護するのには足りなかった。
信仰は移ろいゆくものであり、今後も神社仏閣が残り続ける保証は何もない。
ならば、人間のルールを結界にして土地を護ればよいと考える者が現れたのである。
それこそ隙間妖怪その人だったわけである。
境界を操る能力とはよく言ったものだ。 まさに土地の登記簿そのものが彼女の大魔術だったと言える。
土地の所有権をお金に換えることができることは別の副作用を生んだ。
妖怪達がお金を積めば自分たちで土地を所有できるということである。
これによって妖怪達の勢力は安泰になったのだが
紅魔館の出現により大規模地上げが起こり、大量の小作人が出現するに至ったのが
紅霧事変の裏事情だったようだ。
具合が悪いことに徴収する小作料は良心的でしかも紅魔館からもたらされた外部の農業技術により
生産性も上がったことから土地を寄進する輩も後を絶たなかったらしい。
生活が苦しければ土地を売った方がよいからである。
博麗の巫女の突入によりその辺の事実が明るみになり、幻想郷に対するマイナスよりもプラス部分が
大きいことが分かってからこの案件は解決したそうだが、例の神社の自称現人神が博麗神社に
地上げ行為を行ったのも実はその辺の事情を踏まえた合理的なことであるということを
ここではっきりさせたいと思うのである。