□月 ●日  No1533 遭難注意


この時期の妖怪の山。夜になるととても寒く、注意しないと容易に遭難できる危険地帯である。
たまに遭難者の捜索を行うことがあるが、今回は妖怪の山での遭難案件の話。


正直なところGPSシステムが無い状態で妖怪の山を移動するのは自殺行為に等しい行動である。
一応、我々に協力的な妖怪が沢山いるこの妖怪の山でも登山の際にはそれなり以上の装備をするのが
当然である。食料と防寒装備、トイレットペーパーが欠かせない装備となる。
幻想郷にそんな物を持ち込んで良いかと言われると背に腹は替えられない。


一般的に、沢に向かえば安心だという話があるが、これは妖怪達にしか通用しない知識である。
沢は足下が悪く、あちこちが滝になっており、安全に降りることはまず不可能に近い。
幻想郷の妖怪が沢を目指すのは、低空でも空を飛べるからであって、一般人は
沢に行くより、一度山を登ってそこから正しい道を探した方が良い。
事実、遭難は上るときよりも下るときの方が多かったりするのである。
従って遭難者捜索は沢を中心に探すらしい。結構な確率で遺体となって発見されることになる。


幻想郷の場合は、妖精達や妖怪達を動員して探すことになるが、妖怪の中には
遭難した人間は食べて良いと思っている者もすくなくなく、よほど好意的な妖怪以外は
雇い入れるのが難しいという事情がある。
山道を外れると、普通に妖怪に襲われる確率は跳ね上がる。


自称現人神の神社の場合は山道をかなり整備したという事情がある。
整備したのは我々なのだが、そのときは色々大変だったと聞いている。
妖怪達が侵入しづらいようにするだけではなく、彼らが使う獣道を下手に横断すれば
彼らも生活しているので不便になってしまうという問題を抱えてしまうからだ。


さて、今回の例もご多分に漏れず、沢の付近で遺体となって見つかってしまった。
五体満足で見つかっただけまだ良しと思うべきなのか、死因が凍死というので
この時期の山の恐ろしさを改めて認識する。


手伝いに協力した秋姉妹が、人間はパニックになると強行軍で降りてしまって再度上る体力を
失ってしまうと言っていた。 沢に向かうのはここから出たいと思って降りていき
沢に辿り着いてしまうからだと言っていた。
沢になると開けた場所になるので人間は安心してしまうらしい。
実際はちっとも安全ではないわけだ。


私もこの案件を教訓にして普段仕事で使うこの場所を安全に業務遂行したいものである。