稗田阿求はスペルカードを用いた弾幕戦を一種の模擬戦闘であると述べたことがある。
これを示す一つの資料がうちの会社の資料室から出てきたので掻い摘んで書いてみよう。
スペルカードは少人数でも多人数で闘うことができるルールとあるが、実はもう一つの側面もある。
それは魔術研究のオープンソース化とエコシステムの構築である。
従来において魔術戦は完全な我流での戦いになっていた。実験には自分を実験台にしないとならず
自分の体をこわしてしまう術者が続出した。これは朝倉も、大師様も そして3馬鹿たちも、ノーレッジ女史も
すべてにおいて共通することである。
ゆえに過去の魔術研究では概ね代償の軽減が同時に行われた。結果、若さを手に入れたり
コールドスリープ状態を利用するなど肉体の保存をする羽目になった。
魔術の規格統一はいわば彼女たちの悲願であった。
スペルカードルールは彼女たちにとって丁度良い口実に過ぎなかったのである。
オープンソースとは、妖精でも理解できる弾幕作成システムを作り、その生成アルゴリズムを
公開することである。多くのスペルカードはその発射状態や、妖怪達の能力を勘案した
逆アセンブルが可能である。
ソースコードの蓄積によって、氷妖精の弾幕も相当のレベルに進化したが、
当然基幹技術も、開発した者の予想を遙かに超えて進化することになった。
これをエコシステムと呼んでいるのである。
ここで一つの疑問が残る。この考え方が正しいと、朝倉のやっているコスプレ魔術は幾らデバッグの
ためとは言え、本当に意味があるのかと疑問になってくるのだ。もちろん、メイド長など本人の能力
依存の魔術は相当あるので完全に無駄とはいえないが、ハイスペックなコンピューターが高級言語を
用いて開発の難度を下げたが如く、彼女も無理にコスプレする必要はないような気がする。
まあ、皆まで言うまい。