□月 ●日  No1999 ノストラダムスの大予言


ノストラダムスとかいう予言者が居る。幻想郷に住んでいる奴は概ね長寿であり
ノストラダムスのことをリアルタイムで知っている奴がいるのではないかと思っていたが
期待通りの結果になった。


当時の状況を説明すると、月面戦争の敗北後、月面から帰還した妖怪達によって
月面のテクノロジが持ち込まれた。と言っても、当時は彼らのテクノロジを解釈出来る者は
殆ど無く、そのそれぞれが断片的であり、それら技術の解析が急がれた。
当然のことながら、妖怪だけでは手が足りず人間達、とりわけ占星術師の力を借りて
その技術の分析が始まったわけだ。


そのプロセスで生まれたのが錬金術であり、さまざまな発見にも繋がっていくのだが
とりわけ、このノストラダムスが見いだしたことは所謂公衆衛生の類であった。
熱湯消毒や、アルコール消毒はどちらかと言えば月面戦争で月兎達の救急治療に
用いられたもののコンバートであったが、それらがどうして効果があるかは分からないまでも
一応の成果を挙げることには成功している。


妖怪達の話に寄ればノストラダムスというのは統計的予測師であり占星術でも何でもないらしい。
顕界において情報を集めてその情報を統計的に分析し、結論を出すシステムのパイオニアでもあるのだが
もちろんそのプロセスはすっかり失われて、あまり後世には役に立たなかったと言うよりは
単に大予言という形で商売になったというのが実情のようだ。
もちろん煽ったのは当時の妖怪達だったから世話がない。


もちろん彼らにも言い分がある。ノストラダムスの段階でようやく月面研究の糸口が
つかみかけた地点で本人が亡くなってその糸口が失われるくらいなら彼の研究を通して
ノストラダムスのやっていた行為の引き継ぎ人を用意したいと考えるのは自然である。
結果的に科学の発達が彼の研究を不要としたのだが、大予言だけが残ってしまったというのが
実情のようだ。


出版社はちゃっかりお金をせしめたという話だが、なぜ1999年に世界が滅びるとなったのかを
問うと、人間が勝手に作った暦の最後だからじゃないかと言われた。
つまり人間が決めた暦の最後に滅びるというのは自分たちが暦を支配しているに他ならない
わけで、こと暦を決めた人には都合が良かっただけであるという。
その答えにはそりゃないよと思ったものである。