□月 ●日  No2120 術者の危険


ある書物には「イヤボーン」の法則というのがあるらしい。
これはヒロインが激高した時に特殊な力が働くというものであるのだが、これこそ幻想郷では
あってはいけない代物の一つである。
もしこんなことをしようものなら確実に事故になる。感情の発露のあとは確実に疲労するわけで
疲労の後はバックファイアが待っている。術者は常に無事では済まない。


すなわちこれはどういうことか、弾幕戦で一番必要となるのは冷静であることである。
氷妖精でも弾幕回避時は適当というよりはそれなりに考えて動きを行っている。
そうしなければ被弾するからだ。


ここに、黒こげになった女神の姿がある。
東村先生に瞬殺されたらしいのだが、いや正確には自爆したというのが正しいようだ。
これは魔術と科学の融合過程で起こる問題ということで、治療を待って解説が始まった。


基本的に魔術とはすべてロジックである。
ロジックなしの魔術は最終的に体を破壊することになる。だから魔法使いたちは同時進行で
自分の肉体を不老不死に近い形になるしかない。失敗のない魔法使いはあり得ない。
現代では失敗をデバッグでカバーするが、それができるようになったのはつい最近のこと
すなわち、今目の前にいる「超変態女神」のことである。
彼女は現代技術による魔術の稚児である。肉体改造を最小限に抑えた新世代の魔法使いというべきらしい。


メリーやレンコが露骨に嫌そうな顔をした。こんな魔法使いは嫌だと言いたげだが
メリーの黒装束もどっこいどっこいなのではと思う。いやそっちのほうが明らかに破綻はない。
この女神とかいうやつの服装を着せればたぶん一部の好事家は喜びそうな気がするが
本人は腹回りの肉が気になると以前言っていたから実現は困難だ。


朝倉に言わせればこの変態女神の魔術制御は舌を巻くくらい完璧であるという。
しかし、戻ってきた東村教授に言わせれば、それは余裕がない設計すぎるという。
簡単に精神的に打撃を与えるだけで魔術のバランスが壊れるだろうという。


先生は数発の弾幕を回避したうえで彼女にとって相当痛い言葉を発したらしい。
そのために彼は彼女の過去を洗ったという。 また、特別な能力はおおむね本人の持っている
トラウマによるものだから、その辺あたりを突いたのだろう。
それだけで強大な魔術は逆流しだしたというわけだ。



おい、朝倉、無理だからその女神の服装は着るな。