■月 ●日  No6088

 深く深く沈んでゆく
 上下もわからぬ光の輪の中、時の感覚もなくただ漂うのみ
 どれだけの時が経ったのかもわからない 渇きも飢えもなく微睡の中そこにいるはずだった。
 この場所に追い込んだ人間は罰だと云っていたが、正直ここは罰というには温すぎた。
 むしろ快適そのものだった。しかし、その天国の如き環境は突如破られる。
 ああ、この輪もいつかは壊れるのだな そう思った
 こんなに温くて快適な場所だ、何とか直してもらいもう一度箱に入ろう
 そう思っていた。

 やがて上下の間隔は回復し、あたりは光に包まれ
 なかった
 糞の匂い漂う灰色の空間がそこにあった。 
 きっと箱が異常をきたし、環境を維持できなくなったのだろう
 そう思った

 あたりを見回しすとそこにヒトのようなモノがあったいよいよ箱は不調になったようだ
 箱を早く治してもらわないとたいへんなことになるとかんがえた
 そこで意識と感覚に違和感を感じる

 礫だった
 気が付けば身体のいたるところに空洞ができている 多少の空洞なら問題はない
 がこれ以上は

 そこの人間よこの箱を直しておくれ
 ヒトらしきモノが目に入り懇願した
 きっと箱が不調なのだ 箱が治ればきっと元の暮らしに戻れるはずなのだ