□月 ●日  No779 秋だけ最強伝説


一年の時を超えて奴らが帰ってくる。
やつらの名前は秋姉妹。妖怪たちの体型を破壊するデストロイヤーだ。
奴らの破壊力は下手な弾幕を遙かに超える。
二人の手に掛かれば着ている衣服も一発で着られなくなるのだ。
まさしくデスマシン妹君に勝るとも劣らない究極兵器である。


幻想郷は普段物資があまり潤沢ではないため基本的にダイエットの概念が存在しないとはいえ
これはかなりうちの会社としても看過できない問題である。


そんな秋姉妹から日頃お世話になっているお礼にとお裾分けがあった。
仰々しい木箱に入った。木箱を何故か北白河に持って行く。
ふたを開ける。 一瞬の沈黙。


中身は松茸だった。買ったらかなり高価な代物だ。
顕界で不作だったと聞いていたが幻想郷では有り余っているらしい。
かなり迷惑だがこれも仕方あるまい。


相当余っているのか浅間の元にも同じ木箱がやってきた。
ふたを開けるとやっぱり何とも言えない間のあと大喜びした。
そりゃそうだ。こんな贅沢品滅多に食べられるものではない。


朝倉はもっとわかりやすかった。
口に唾液を含んだのか、こっちにも音が聞こえてくる。
ここの松茸は相当美味いのか。
これは期待大だ。


とりあえず皆でバター焼きにして食べる。
予想通り最高に美味かった。 浅間が仕事中にもかかわらずビールを飲んでいたが
一瞬であってもそうしたい衝動に駆られるのは仕方ないと思う。


遅れてやってきた岡崎にも松茸入りの箱を見せた。
しばしの沈黙。
彼女から出た言葉は予想外の物だった。
「新手のセクハラですか?」というのだ。
一瞬険悪な雰囲気になったが、秋姉妹がフォローを入れてすぐに
機嫌を直した。 
最後は漂うバターの香りと食い気に負けたようだった。


とりあえず落ち着いたころ朝倉が私に耳打ちしてきた。
秋姉妹は豊穣のカミである。と。
五穀豊穣という意味もあるのだが、そこにはもう一つの意味もある。
そして意味が分かった者はしばし硬直するわけだ。
この微妙な間が秋姉妹には面白くて仕方ないようだ。
大迷惑である。


幻想郷の食べ物に舌鼓を打ったあと帰還。
浅間と北白河の発想が垣間見えて有意義だっただけ言っておこう。