■月 ○日  No425 素早く布石を打つこと


紅魔館でロケットを本気で作っているらしい。 紅魔館に仕掛けた盗撮カメラによると
どうやら木製のようだが、幻想の世界では木製であっても謂われを与えられれば
本当に宇宙を舞うことだって不可能ではないという。
しかしそれに対して永遠亭はなにも変化がないことがある意味不気味であった。
朝倉はどうせ、ヴァンパイアの主人は何も出来はしないと
高をくくっていると言っていた。


歴史を紐解かなくても小さなミスの蓄積が雪だるまとなって大きな問題になるのは
よくあることだ。 ダムが崩壊するのは一個の小さな穴からだし、
クレームの発生も些細なミスが発端となる。
どんなことでも侮らないこと、これは仕事に対しても同じだとボスは言う。


ハインリッヒの法則というものがある。 重大な災害は数千もの不安全行動が
積み重なって起こるというものだ。 そしてその98%は予防可能であるという。
これはしばしば労働者の安全行動面のみの精神論で片付けられることであるが
実際は仕事の合理化や、ミスが起こりにくいチェック機構を含めたものであり
特にミスが下手すると人命に関わりかねないうちの会社ではかなり重要視されている。

  
月の民をはじめとする寿命が長い人々はしばしば素早い対応を忘れてしまうらしい。
それは永遠亭の様子を見ても幻想郷の様子を見ても分かる。
月の民は我々の行動をせかせかしているとしか捉えていないのだ。
素早い対応ができない体質はいつしかすべてを手遅れにしてしまうだろうと
ボスは言う。 それは幻想郷に対しても彼女自身に対しても言っていること
のように思えるのだ。 


幻想郷の情勢は刻一刻と変化している。 すべてが手遅れにならないように
ひとつひとつ布石を打つことこそ重要なことである。