△月 □日  No458 組合とセーフハウス


幻想郷で働いていると時間の感覚が狂いやすくなる。
スローモーな生活に浸りすぎていると、ふと現実に戻される出来事がある。
組合の人に呼ばれて「働き過ぎ」と言われるときだ。


もちろん幻想郷の仕事は拘束時間こそ長いが実際はゆったりとしている。
とはいえ、私が幻想郷にいる間は社内出張扱いとなってしまうため
しばしば勤務時間超過に陥ってしまうのだ。


今日も少女の姿をした組合の人にさんざん小言を言われた。 
この組合員も実は妖怪である。
妖怪ならでは驚異的な体力で長時間の交渉ごとを切り抜けるらしい。
同じ話をくどくど話すその姿は閻魔様を連想させる。
休みを取らないとペナルティとまで言われ泣きたくなってくる。


彼女も必死である。 なぜならもし労使間トラブルが起れば
うちの会社の実体が世の中に露呈してしまうのだ。
会社内部の情報統制には、まず社員のケアがあってこそだそうな。


仕方がないので休みを利用して最近、朝倉の薦めもあって
幻想郷内にセーフハウスを建設することにした。
費用は会社で負担してくれた。 朝倉が便宜を図ってくれたらしい。


知り合いの妖怪の助けを借りて缶詰やら武器やらスペルカードやらを
積み込んでいると、自分だけの秘密基地にいるような気がして
なんとなく自分の城を持つ香霖の気持ちが分かるような気がした。
結構不便なところもあるが緊急用の場所と考えれば
それほど居心地が悪いわけでもない。


その話を会社でしていたらボスが、その気になれば幻想郷に
永住できそうではないかと言われた。
それはそれで勘弁願いたいところだ。