△月 □日  No483 本家と分家の軋轢


幻想郷で始末の悪いことと言ったら、本家と分家の制度だと思う。
本家と分家に別れる家はたいがいお金持ちで、それなりの「しきたり」なんてものがある。
このローカルルールを我々にも押しつけてくるのだ。


物を運ぶときも色々と面倒を押しつけられる。
たとえば何かの催事の場合の納品は本家が先で分家が後である。
これを間違えるとクレームが起こる。


妖怪たちのクレームは即命の危険に晒されるが、人間のクレームは死にはしないが
即出入り禁止の沙汰となる。 酷いケースだと分家が本家の怒りを買ったと言うことで
両方から出入り禁止になることさえある。


妖怪たちはそんなローカルルールを馬鹿にしているので、この手の問題で
しばしばトラブルが頻発する。
その都度私に、人間には何故変なルールがあるのだろうかと聞いてくるのだが
どうしても「私の住んでいるところはそんなローカルルールはない」と答えるしかない。


冠婚葬祭だと本家と分家の差がしばしば大問題を引き起こす。
今日、妖怪と人間の結婚式に招かれた。
その人間は本家の人間でたくさんの分家を結婚式に招いたわけだが
その時の分家のひとたちのひそひそ声が耳障りで仕方ない。
曰く、妖怪との混血が本家を継ぐなんて考えられない
曰く、人間の嫁さんを探せない本家が本家であるものか
ハレの日だというのにこんな下世話なことを平気で言えるのだから
本家と分家の軋轢と言ってもどっちもどっちなのだろう。


さっさと帰って不貞寝したい気分だったのだが、幸せそうな二人を見て精一杯
愛想笑いをするのが限界だった。
そういえば香霖も、妖怪と人間との混血だったことを思い出した。
彼もこういった環境に身を置いていれば精神的に病むに違いないと思う。
個人的には分家の人間に一言言いたかったのだが、一緒に参加していた上白沢が
静止してくれた。


本家も分家もない今自分の住んでいるところに感謝したい気持ちになってきた。