□月 ●日  No1126 新たなる関係


ボスは接待のために出張。朝倉が若干不機嫌になりながら執務。
うちの会社ではしばしば接待のために人が出入りすることがある。
ボス曰く可能な限り交友関係は広くという。


朝倉、魂魄、ボス、冴月みなそれぞれに強力なコネを持っている。
彼女たちの実力があれば多少の苦難は突破できそうものだが
外の世界にいる妖怪たちは基本的に個人的な行動をしないことが知られている。
常に徒党を組み、組織的な行動を旨とする。
そして必ず人間たちを利用し、彼らに利益を与えつつ持ちつ持たれつの関係をつくる。


これには理由があるという。
朝倉の話だが、かつて妖怪と人間の架け橋になるべく奔走した人物がいたらしい。
しかし、人間にとって妖怪は退治されるべき存在、結局彼女も妖怪のレッテルを貼られて
地中深く封じられることとなってしまった。


朝倉に言わせれば、それはその人物の力が足りないからではなく、政治力が足りないからだという。
俗世間から隔離して聖人君子のような振る舞いをしていたとしても、世の権力者と密接な
繋がりを築かなければどんなに力を持った人物であった手も身を守ることはできないことを
身をもって証明したという。


この件は妖怪たちに大きな衝撃を与えたが、妖怪の一派は俗世間との関わり方を大きく改めることに
なった。 人間の社会機構を利用する方向へ移行しだしたのである。


最近、その聖人君子を復活させようとする動きがあるらしい。
その人物が復活したとして、人間と妖怪の関係性の変化をどう伝えるかが問題となっている。
あの人は地底に封じられた方がまだ幸せかも知れないと言われたが
朝倉がなぜ不機嫌なのか、なんとなくだが分かった気がする。