△月 □日  No492 隙間的お歳暮


うちの部署に隙間妖怪がやってきた。
美人であるが、明らかに場違いなゴシックロリータの服装を身に纏い
色々な意味で周囲の注目を集めている。


彼女が会社に来たわけは、幻想郷内外から集まった大量のお歳暮の整理である。
彼女ほどの人物ともなれば黙っていても贈り物の類が集まってくるらしい。
白玉楼にもたくさんの食べ物を運び入れたらしいが、さすがに収納場所で困ってしまい
うちの会社に持ってきたという。


箱を数点開封すると缶詰の類が多く見られる。
白玉楼の御庭番にはこれはちょっと苦手そうに思える。
代わりに白玉楼には、煎餅やクッキーのセットなどを優先的に置いているらしい
うちの会社なら、座敷付きの休憩室にでも置いていけば勝手に誰か食べてしまうに
違いないだろう。


北白河と朝倉が内職するようにてきぱきと開封していく。
開封した物の中からとりあえず家で食べられそうなものを物色して袋に詰める。
周囲を見たら、姫ちゃんこと閻魔様と死神も袋をもちこんで蜜柑の缶詰やら桃の缶詰を
懐にしまっている。 仕事しろよお前ら。


始末に困るのは海苔である。やはりお歳暮の定番だけにたくさんあるのだが
こちらのパックはそのままカートンに積み込まれ幻想郷に持ち出される。
これからお餅の季節になるので、海苔は欠かせないのだ。
幻想郷はどうしても海苔を自給できないのだが、こうやって幻想郷に海苔が
出回っているというのはとても興味深いだろう。


今年の流行は量こそ少ないが美味いものだそうで、中にはカニとかステーキの類も
入っていてなかなか侮れない。 もっとも高価なものを見つけると
隙間妖怪が横取りしてしまう。 もともと隙間妖怪の物だから文句を言うわけではない。
こうなると単にお歳暮の整理作業に付き合わされているとも言う。


岡崎がなにやら集金をしている。 隙間妖怪にお歳暮を贈れなかった人向けのものだ。
このお金で高価な年代物のワインを買うのが年中行事となっている。
ワインを受け取った隙間妖怪は満面の笑みで「ごちそうさま」と言って帰るのだ。


隙間妖怪が帰ると、早退が許可される。
実はこのときの会社は姫ちゃんたちギャラリーを除き、まるで真剣を扱っているような
緊張感に包まれているのである。 隙間妖怪が帰ると、医療室には頭痛薬やら胃薬を
ほしがる社員でごった返す。 
そんな風景を見ていると、師走だなと感じ入る次第である。