玄爺による年始早々博麗大結界に関する社内カンファレンス。
博麗大結界生成の直接的動機とその時発生した諸混乱についての講義が行われた。
現地法人の里香女史や明羅女史まで呼び寄せての大規模なものである。
それによれば、博麗大結界が今の姿になった直接の要因は
明治政府による神社合祀政策によるものだと言う。
神社合祀とは所謂神社の合併政策である。八百万のカミ様が持つ合祀のシステムを応用し
神社の経済力を増強し、同時に神社維持のための公費を削減する狙いがあった。
神社合祀は妖怪たちの住処を奪うためのものではなく、むしろ欧米列強から入ってくる
別の信仰から八百万のカミを護るためのものであった。
しかし、実際には一町村一神社という妙な枠組みが作られてしまい
いらなくなった土地や材木を利用するという名目で数々の利権が絡むことになった
結果、神狩りと呼ばれる自然破壊や略奪などが横行することになった。
南方熊楠らが官民が絡んだスキャンダルを告発するまでこの現象は続いたという。
この状況を重く見たのが妖怪の賢者達だった。
神社合祀の適用基準は担当官クラスの裁量に任せられていたことを利用して
当時形成されつつあった妖怪たちの基金で官を買収、霊的に安全な区域を用意した上で
大結界で妖怪たちを隔離するシステム博麗大結界を作ることにしたと言うらしい。
政府としては合祀による妖怪や八百万のカミとの軋轢で国土が荒廃することは
どうしても避けねばならなかったし、妖怪たちもまた人間社会を利用しながら
生きながらえるためには血の気の多い妖怪たちを隔離するシステムが欲しかったという
色々な思惑が絡んでいるらしいのだが本当のところは分からない。
その証拠に妖怪たちの争いに使われるスペルカードシステムは、隙間妖怪にとって
とても有利に働くように設計されている。
これがやもすれば種も滅ぼしかねない妖怪たちの力に一定のリミッタを設けている
とも考えられるのである。
魂魄がこの忙しいときに研修をやられても困ると愚痴っていたが
私が思うに巨大化に歯止めがかからない大結界生成時の混乱を学習して
後々の問題解決の糸口をしようとする意図を感じることができた。
私にとっては人間の側から見た大結界の話は興味深いことである。