□月 ○日  No533 全社禁煙


出勤したら朝倉達みんなが、社内通達の掲示板前に釘付けになっている。
社内で喫煙をしている者が未だにいるので、喫煙者にはペナルティを課すと言う内容だった。
経理部の部長が大の嫌煙家のためいつかはそうなるだろうとは思っていたが
来るべき時が来てしまったと言ったところか。


休憩室にあった数少ない自動販売機はいつの間にやら撤去され、会社の休憩所にある
専用喫煙ルームまでもがさらに狭くなった。
私や岡崎、北白河は今回の措置には大賛成だが、妖怪社員達は内心穏やかではないようだ。
実は人間よりも妖怪たちのほうが煙草を吸っているのである。


幻想郷にも煙草は存在する。 パイプ煙草かと思っていたが
意外や意外、結界の外とほぼ同じ姿の紙煙草が主流である。
博麗大結界が今の姿になる前に丁度煙草が今の姿になったらしい。


うちの部署でもヘビースモーカーの朝倉をはじめとして魂魄も煙草を吸う。
ボスは煙草を吸わないらしいが、嫌いというわけではないらしい。
うちの部署に入ったばかりの浅間が、社内飲酒も禁止になるのかと不安そうな顔をしていた。
なぜなら浅間はお昼休みなどにビールをジュース代わりに飲んでいるからである。
お陰で彼女にお茶くみをさせることもできない。
酒臭い臭いをまき散らしながら客人を迎えるのはいくらなんでも常識外れである。
ボスは浅間のアルコール禁止令は当面無いと言っているので、さし当たって
問題はないと思われる。


天狗の借金取りが新年の挨拶と世話話をするためうちの部署に遊びに来た。
禁煙を告げたらとっても不機嫌そうな顔をするので、みんなで外に出ることにした。
外は寒いが喫煙家にとっては背に腹は代えられないらしい。
そこで驚くべき光景を目の当たりにした。


天狗達は煙を吸っているのだが、その吸った煙と思われるものが鼻から吹き出しているのだ。
特殊な呼吸器ゆえの特性だと聞いたが、美人の天狗が煙を鼻から出しているのは
恐ろしくシュールな光景である。
あと少しで笑ってしまうところを一生懸命こらえた。


夜会の席でボスがペナルティの内容を発表した。
とりあえずビール一ケースを買って休憩室に置くことになった。
大半は浅間の胃袋に納るだろうが、ちょっと小粋なルールに苦笑してしまった。