街を歩くと羽織袴や振り袖を着た新成人達をよく見かける日。
私にとっては、和服を着た姿を見てもあまり違和感を感じない。
職業病といったところだろうか。
幻想郷では成人の日というものは存在しない。
大結界分離前は徴兵検査のタイミングを成人とする向きもあったが
一種の通過儀礼をクリアーした者を成人として認めるという従来の
やりかたに戻ったといったところだ。
成人のタイミングは人それぞれだし年中行事としてやっている。
女性は昔はお歯黒をつけていたらしいが、今はファッション的に
流行らないらしい。
今日、幻想郷で仕事をしていたら、納品先の近所に住んでいた人が亡くなったということで
お通夜の準備を手伝わされた。 拒否権はない。
たとえ外の世界から来た人でも、いやだからこそだが郷には入れば郷に従えを
徹底的に実行しないといけないのだろう。
幻想郷では成人すると様々な義務がつきまとう。
我々の住んでいる世界では行政がやっていることを皆で持ち回り分担するわけだから
当然のごとく大人としての心構えというものを強く意識することになる。
私の住んでいるアパートでもゴミ回収に関して様々な決まり事があるが
幻想郷で生活していれば、そんなことは些細なことにしか感じないだろう。
いざお通夜ということで亡くなった人の親戚たちが集まってきたのだが
みんな色つきの服装を着てきて唖然とした。
思わず質問したらこの年齢にもなって物事を知らなすぎると叱咤された。
何でも喪服を着るのは葬式の時らしい。
沈痛な雰囲気になっていると思いきや、宴会のような雰囲気になっているのも
特徴的であると思う。
時間が着たので、責任者の方に一言礼をしてから次の現場に向かう。
咎められそうで後ろ髪を引かれたが、「あなたの場合は仕方ない」と言われて
少し気が楽になった。 とても有り難い話だ。
もっとも次の配達先である中有の道でその亡くなった人に出くわしたと知ったら
彼らは何というだろうか。 少し考えて苦笑してしまった。
つくづく因果な商売だ。