幻想郷でお酒を語る際、お酒の銘柄よりもまずは酒席に関するルールを
知っておくべきだろう。
うちの部署にいる最強の呑兵衛と言えばなんと言っても浅間さんだが、
彼女が幻想郷に行って最初にびっくりしたのが
「乾杯」の概念がないことだったろいうのである。
そもそも乾杯の歴史が意外と新しい。その謂われは幕末に遡る。
博麗大結界が今の姿になる直前の話だ。たしかに幻想郷にとっては
新しすぎる風俗なのである。
妖怪達は妖怪達の嗜み方があるので、「乾杯」の概念が広まりにくいという
理由もある。 それでも最近はノリで乾杯をやるようになってきた。
これはやはり自称現人神一味の影響が大きい。
幻想郷でよくあることと言えば返杯である。
顕界でもおなじみのこのルールだが幻想郷では魂の交流という
大切な意味合いがあるので、拒否してはいけない。
ところがこの返杯に異を唱えた者がいた事実は意外と知られていない。
ヴァンパイアの主人である。
彼女に言わせれば不潔という。ところ変われば返杯の感覚も違うということか
いや、紅魔館には返杯は素晴らしいことですと言う困った人もいるにはいるが
本人の名誉のため言わないでおきたい。 第一言ったら消される。
幻想郷で返杯というのは擬制血縁とか親戚になるという意味合いもあるのだが
これもヴァンパイアの主人にとってはあまり面白くなかったようだ。
ちなみに、彼女に返杯させた鬼娘がどうやったのか尋ねたことがあったが
子分関係の杯にも使うことを教えたら上手くいったという。
ノーレッジ女史が直後酒を呑まされたとぼやいていたのを覚えている。
そんな浅間だが、天狗や鬼と飲み比べができるということで、うちの会社内でも
トップクラスに有名人になってしまった。
妖怪を平伏させるには酒の力が一番だと言うことだろうか。