□月 □日  No644 幻想の世界を汚染する化学物質


最近幻想郷に色々と危険な農薬や科学物質の類が流れ着いている。
いわゆる不可抗力的な神隠しによるものだが、このところその危険性が洒落では済まなくなってきた。
こういう薬品類に対して霊能局はろくに対応してくれない。
小兎姫にそのことを相談したら「私学生時代 理科2だったの」ときた この大嘘つき。


しかもこのような化学薬品は妖怪自身でどうにかできるものではない。
しかも下手をすれば妖怪といえど命を落とす危険な代物である。
ひとつは、クロルデンと呼ばれる薬。 シロアリ駆除で広く使われている薬だった。
自然で分解されにくくしかも蓄積して生物に被害を与えるということで
顕界では20年くらい前に禁止薬物として認定されたが、こいつが幻想郷でも発見されたと言うことで
大騒ぎになったというわけだ。


北白河の話では香霖がクロルデンを取り出して虫除けとして店の外壁に塗りつけようとしたところを
パイプ椅子で殴打して阻止したらしい。
クロルデンは揮発性も高く、こんなものを塗ったら風下の妖怪たちも無事では済まない。
視力が低下したり、嘔吐したりで済めばいいが、虫妖怪たちは確実に死ぬ。


こういう薬品は隙間妖怪が構築する隙間に廃棄するのが一番である。
香霖の能力を利用してクロルデンを収集、それを買い上げてお互いに利益を得る作戦に出た。
なにしろクロルデンかどうか分かるのは香霖のみ。
虫妖怪たちは自分の命がかかっているから必死に香霖のところへクロルデンを届けに行く。
でそれを香霖が安く買い上げて、我々に売る。ボロい商売だ。


あまりに効率よく儲かるので店を新築しようかという話も出た。
もし名前を付けるなら「クロル殿」とか言い出したので、朝倉特製ハリセンで殴っておいた。


構造用合板なども最近幻想郷に流れ着いている。ここから飛び出すのは有名な
ホルムアルデヒドである。 ホルムアルデヒドも幻想郷に入り込んできつつあり、
できる限り、除去して廃棄するようにしている。


幻想郷ではシロアリの薬がつかえないため、家はいつも食べられ放題だ。
永遠亭も当初は我々を拒む様々な結界で家を守っていたが、博麗の巫女が永遠亭を襲撃する事件が
あって以来はそうはいかないようだ。


昔の建物がそのまま残る月の建物はどうかというと、いわゆる生態系から建物そのものを外すという方法が
とられているらしい。 建て替える必要がないのだ。だがおかげで建物の近代化は大きく阻害される結果となる。
月の技術を応用してシロアリの被害を減らせないかと朝倉に尋ねたら
化学物質も月の技術も自然の道理に真っ向から対立する「外道の魔術」であると言っていた。


当分は虫妖怪のおまんまは確保されそうである。