□月 □日  No643 本当の母の日


風見女史から大量の白いカーネーションを買い入れる。 母の日のイベントで使うためである。
ところが幻想郷の母の日は意味合いが大きく異なる。 まずカーネーションの使い方が違う。
この白いカーネーションは自分の母親に対するプレゼントではでない。
そもそも母親にプレゼントを渡す風習というのは後世になって新たに付け加えられたものだ。
サンタクロースが飲料メーカーの広告塔だったのと同じような位置づけと思えばよい。


幻想郷に行けば母の日に秘められた本当の意味を理解することができる。
母親に対する感謝や労いもちろんそれもある。だが母の日の実態はそれだけでは終わらない。
阿礼乙女が母の日の風習が幻想郷に入り込んだときのことを話してくれたときがある。


博麗大結界が現在の姿になったときのこと、幻想郷内部で混乱と戦乱がもたらされたと言われる。
このとき、妖怪退治のエキスパートであった人間達もまた戦争に巻き込まれることになった。
結果的に龍神によって強制的に戦争は終結したとあるのだが、そのとき多くのけが人や戦災孤児そして未亡人が出た。
残された人たちは助け合うための社会運動を起こしたと言われる。 それが幻想郷における母の日である。
母の日の正体、それはいわゆる平和活動であった。


このとき、母の日発祥の地であった米帝で一つの異変が起こっていた。
母の日を商売にしようとした人たちが、元々は南北戦争の反省から始まった「平和活動としての母の日」を
覆い隠してしまったのである。
かくして本当の母の日は幻想となり、幻想郷へと降り立ったと言うわけだ。


幻想郷における母の日は、幻想郷に住うすべての母親にたいして感謝するイベントである。
人間の子供も妖怪少女も道行く人に白いカーネーションを配り、幻想郷の平和を願うのである。


さてこの母の日イベント。自称現人神たちはかなり戸惑っているようであった。
あまりに様子が違っているからである。
そんな彼女から風変わりな注文が舞い込んだ。 
外の世界でお世話になった人たちにもカーネーションを配れないかと言うのである。
彼女もまた母の日の意味を学んだようだった。
もちろん決まりでそれはできない相談である。 
風見女史は乗り気であったが結局里香女史からストップがかかった。


朝倉は自称現人神たちが無事であることを証明するいい機会だと言っていた。
だが幻想郷のものを直接持って行くことはできない。
すると朝倉は少し思案して「花は外で調達すればいいじゃない」と言ってくれた。
それはノーマークであった。


受けた注文分を花屋に注文しなおして、宅急便で送ってもらうことにする。
なんとも奇妙な話であるが、何も送らないよりはアクションを起こすことが大切だと朝倉に諭されてしまった。


次の休みはなんとか実家に帰りたいものだ。