□月 ●日  No859 謎のペーパーカンパニー


うちの会社は幻想郷に物資を運ぶことを主な業務としているが
うちの会社が独占しているわけではないようだ。
たとえば隙間妖怪が戯れに始めたボーダー商事なる会社があるが、
はっきり言って経営実態は出鱈目でまさに会社ごっこと言って然るべき内容である。


そもそも何をやっているところかすらよく分からない。
噂だと人材派遣会社とも言われているが実質ペーパーカンパニー同然だから
殆どの住民は無視している。
一説には白玉楼のお庭番が所属しているとか、給料をピンハネしているとかと言われているのだが
彼らが活動しているところを見たことがない。


このボーダー商事になんと国税局が入ったというのだから驚きである。
隙間妖怪は一体何をやっているのだ。
朝倉に聞けば申告漏れだとか、金を隠したとか偉いことをやってくれたらしい。


このボーダー商事やたら広告費ばかりかけている。
どこから金が出ているのかは分からないが、人気音楽作家を利用してやたら会社を宣伝している。
経営実態がないにも関わらずだ。
ご丁寧に社歌まで作ってある始末である。


私の所属もその会社と勘違いされる。最初は都度やんわりと指摘ていたが
どうやら別の意図が隠されている気がしてきたので最近はやめている。
今では会社名だけが一人歩きしている。それもなぜか顕界で一人歩きしているのだ。
どちらにせよ、注文は私の会社にやってくるし別になにか特別被害があるわけでもないのである。
こうなるとますます謎だ。


昼間その辺の話を浅間あたりとしていたところ、それは煙幕のようなものだという。
黄昏酒場群が一般的な酒場のふりをしているように、経営実態のない会社を目くらましに
利用しているのではないかと言うのである。
それにしては目立ちすぎだと思うのだが、それくらいうちの会社も目立つ行動をしていると
言われてはっとした。


しかしこのボーダー商事本当にふざけた会社だ。
ライバル会社ができて少しは競争原理が働いて市場がエキサイトするものかと思ったが
こんな経営実態のない会社とは一緒にして欲しくないというのが本音だったりするのだ。
朝倉は失敗したらボーダー商事のせいってことで世間が評価してくれるから
それはそれで便利だと言っていたがなんとなく釈然としない。