□月 ●日  No907 月人あれこれ


月人を相手にしているとそのレイシスト振りに閉口するときがある。
決して教養が無いわけではないのだが、うちの同僚が不快だと愚痴っているので
普段からそういう言動をしているのだろう。 正直言って痛すぎる。


こういう場合は聞き流した方が無難だ。気にしたところでどうにかなるわけでもないし
心根なんか早々改まるとは思えない。
神様を下ろしたり使役したりして偉いだろうと言われても、運用方法が後ろ向きすぎて
どうにもこうにも泣けてくる。


進歩することをやめたら環境変化に耐えられなくなるのではと聞いたこともあったが
そのときは自分たちの力で環境を変えるまでだと言い切ったのでこれ以上なにも言わないことにした。
こんな調子だから地上人にちょこちょこと技術を盗用されるのだろう。


いざとなったら遺伝子配列を変えればいいとまで言い切っているが
いざいじろうとすると全くいじれないのだから奥ゆかしい。
だからいつまでも人の形のままなのだろう。
薬屋の話では、放射線障害も力づくでクリアーしたと言っていたが本当に怪しいものだ。


さて、そんな月面であるが酒が自給できない事実には驚いた。
神を使役して酒を作るとあるが、酒が造られるプロセスは発酵すなわち腐敗である。
誰が見ても穢れの領域である。 この矛盾を解消するため、わざわざ神酒と言う言葉まで作って
地上から酒をくすねていたようだ。 素直に穢れを認めればこんなややこしい話にはならないだろう。
お陰でうちの会社が潜り込めるだけの隙が出来たとも言える。


そういえば乳酸菌入りの化粧水が月面で大リコールになったときは悲惨だった。
薬屋にこれはいいよと言って勧められた豊姫が何を考えたのか100ケース発注。
一気に広まったまでは良かったが、乳酸菌入りだとわかって大パニックになった。
回収費用の方が高くつきそうなものだが、月面の金銭価値が大きすぎて大した被害額にならなかったという。
なんともはやである。


月人の一人からどうせだったら後天的に力をやるかと言われたが遠慮することにした。
綿月姉妹の力も後天的な力と聞いていたのだから実績はあるのだろう。
なにか実験動物みたいにされそうだったのでやめた。 欲がない奴だと言われたのでほっとしたが
デスマシン妹君とかと対峙するときになんか貰っておけばよかったと思うも後の祭りである。