□月 ●日  No960 決算スクランブルエッグ


決算である。この日取引先も決算が絡むため商管の仕事が暇となる。
こう言うときにスクランブルで注文があるとかなり鬱になる。 
こういう時は妙技現金仕入れを使用するしかない。


現金仕入れとは取引先が色々な理由で間に合わない場合、直接一般の販売店から物を買って
そいつを幻想郷にもっていくことを指す。 原価ベースでの仕入れができないから儲からず、禁じ手として知られているが
信頼を損ねる方が遙かに大きな損失と判断された場合は背に腹は代えられない。
決算時期なので、小口の出金依頼をしたら経理部の姉ちゃんが凄く嫌な顔をした。
それでもなんとか現金を確保できたのは、元経理の浅間がとりなしてくれたからだ。
アルコール中毒だと思っていたが、お金の流れを熟知した身内がいるのはなんとも心強いものだ。
この日の注文は風邪薬、相手はなんと上白沢の邸宅となっていた。


伝票処理は北白河に任せて、検疫部に納期短縮を掛ける。
連中も外部から商品が届かないので暇らしく、あっという間に処理が終わる。
パッケージが外されて風呂敷に包まれた商品を届けることになる。
浅間が卵酒に合う酒を用意してくれた。卵は現地調達だが、お酒は検疫部を通しやすいので
とても有り難い。


現場に着くと、メトセラ娘が上白沢に介抱されていた。
どうやら珍しく風邪をひいたらしい。 蓬莱の薬を飲んでも風邪を引くのかと感心する。
必殺 自殺回復はしないのかと小声で聞いたら、やろうとしたら上白沢にばれたと言って苦笑していた。
私は知っている。 永遠亭の姫様と共謀して、目尻に小じわや染みができたとあらばドローゲームを
装って自滅していたことを。
薬屋のところへ行けないため、我々の方に薬を依頼したということらしい。
解熱剤と栄養剤と総合感冒薬をとりあえず渡す。 効き過ぎて逆にまずいのではないかと思うが
その辺はメトセラ娘なので心配ないと思う。


浅間から託された卵酒を造ることにする。
メトセラ娘が「風邪が治ったらコノハナサクヤヒメに会う」と言っていたが
まさかこの酒を提供している主が関係者だとはきっと夢にも思うまい。
長居はできないため自分の仕事はここまでとする。


会社に戻ったら北白河が遅いと毒づいていた。私の引き渡し証を待っていたらしい。
幻想郷に居るとリズムが崩れて困る。結局、少しの残業で終了した。
これでも一昨年と比べれば遙かにマシだ。 ルーコト軍団と浅間、北白河が便利すぎる。


朝倉の机が酷く荒らされていたのに苦笑した。
一体どれだけ伝票を隠していたのだろう。