□月 ●日  No1015 死神と銭形の世界


死神小町を談笑していたら運悪く死んだばかりの亡者と鉢合わせする。
そして案の定、三途の川の渡し銭で大きく揉めた。
この亡者腕っ節が強い地震があるのかそれとも死神の外見に何か勘違いしたのか
襲いかかってきた。 その動きを止めたのは、彼女が放った投げ銭だった。


三途の川と言ったら人が死んだときに渡るところと相場が決まっている。
その川の渡し船の船頭さんをやっているのが所謂死神達である。


死神達の武装は鎌のように見えるが実際のところ鎌を利用する場面は殆ど無い。
そもそも西洋妖怪の真似をしているだけの場合が多いのである。
酷いケースだと先っぽが刺さると痛いというので丸めている奴や
樹脂製の刃物を付けている死神もいる始末だ。
だが彼らの主武装は別なところにある。 それが銭だ。


銭と言ったら真っ先に思い出すのは銭形平次だろう。
彼が銭を投げるのは、あの当時人間に擬態した妖怪が犯罪を起こすことが多かったからである。
そのため、人間にも妖怪にも一定の打撃を与えることができる銭が有効だったわけだ。


銭もそのまま投げれば意味がないが三途の川の渡し賃という謂われを得ることで十分な威力を持つことができる。
銭はその人の持つ縁を意味し、死神に全額渡すのは生前の縁を全て切り離す必要があるためだ。
これをきちんと行わないと結果的に怨霊化の原因となりうるのである。


縁が多かろうが少なかろうが、結局のところ全部渡せば渡し賃としては有効だ。
襲いかかった人は結局のところ大切な縁を全て差し出すことができなかったのだろう。
気持ちはわからなくもない。
だが、死神が差し出さないことによるデメリットを説明するとどうにか了承して貰えた。


これで分かったのだが、死神達が昼寝しているのは暇だからと言うより、こういう困った亡者を対応して
疲れていることが多いということだ。
毎度毎度クレーマーとやり合っていたら普通の人間なら確実にやる気を失う。
だからマイペースさが死神には必要なのかも知れない。


死神小町からお前も死神の才能があると言われたがまっぴら御免である。
なんか闘わなきゃ行けないのかと尋ねたら漫画の見過ぎと言われたのは秘密だ。