目にゴミが入ったという氷妖精に目薬をさしてみる。 暴れまくるので明羅女史に抑えて貰ったが
どうも目薬が眼球に到達する直前に氷になっていたみたいだ。 これは痛い。
よく失明しないものだが、これが妖精クォリティなのかもしれない。
幻想郷の妖怪たちは多種多様な動物をモチーフにしているが
彼らには共通した特徴がある。 それは視力が高いことだ。
本来視力の高さは霊長類、とりわけ人間に近い霊長類に限定される。
妖怪たちが弾幕を回避できるのもとりわけ高い視力があるからだ。
妖怪たちは主に月人が既存の動物たちを改造したという説が有力だ。
そして妖怪と普通の獣の判別手段が、この目である。
それを可能としているのは眼窩後壁 (がんかこうへき)の存在と網膜上のフォベアの存在である。
幻想郷の妖怪は虫型、鳥型など問わずこの特徴を持つ。
眼窩後壁とは頭蓋骨にある、目を支えるための壁面である。
霊長類と、犬などの獣類の頭蓋骨を比較するとよくわかる。 霊長類の目は完全に埋まっているのに対し
獣類は所謂空洞である。
これにより目の位置が固定されて弾幕回避の時に焦点を確定することが可能である。
所謂カメラの三脚のような存在と言えるだろう。
本来は大飢餓時代を生き抜くため霊長類が獲得した特徴である。
もう一つはフォベアと言われる、目の中に有る視神経が集中する場所である。
観察するとまるで染みのような姿をしていることから名付けられている。
これにより画素数が大幅に増え、弾幕の隙間をみることが可能となる。
更に忘れてはいけないのは、三色色覚の存在である。
通常動物の目は、光の三原色である赤 青 緑のうち
青と緑しか判別できない。 弾幕戦では多種多様の色の弾幕があるが、それら色を判別できるようにすることは
美しさを競う上でとても重要なことである。
だが視力の高さは同時にコミュニケーション能力を大きく高める結果にもなった。
事実、真猿類は視力を得ることで表情やジェスチュアによるコミュニケーションを獲得し
社会性を得ることが可能となった。
それが本来スタンドアロンだった妖怪にも起こり、月面戦争の遠因となったことは否めないのである。
さて氷妖精であるが、痛みで流れた涙でゴミは無事取れたのだった。
本人から感謝されたがなんともまあ複雑な気持ちである。