□月 ●日  No1326 NSA


「ミスヒエダが幻想郷上空に飛んでいる所属不明機を問い合わせています。」
「何だと、許可した覚えも記録もないぞ」
「所属不明機は三機、内一機は我々のエージェントによって破壊されました。」
「彼女と連絡は取れるか?」
「現在もう二機と交戦中とのことです。」
「連絡システムを再構築し彼女を捉え続けろ。」
「ボスの動きは?」
「今のところ主立った動きはありません。」
「静観か?間違いない判断ではあるか。」


「幻想郷上空に飛んでいる戦闘機ですが所属が判明しました。」
「カクタスカンパニー、変な名前じゃないか。」
「今回のターゲットはこいつらだ。これ以上ヤクモに手出しはさせてはならない。」
「奴らの通信網は全て押さえろ。 合法非合法問わない。」
「幻想郷上空の衛星はどうだ?」
「ヤクモからの許可OK 衛星を全て押さえました。」
エシュロンを発動 幻想郷に関して全文検索を掛けろ 黒幕を暴く。」
「テングの協力はどうした?」
「現在100人規模の全文検索システム構築許可が下りました。7分後に接続。」
「お前ら、一刻も早く黒幕を暴き出すんだ。」


「カクタスカンパニーの代表者は?」
「エーリッヒです。」
「奴は何処にいる? 直接圧力を掛けろ。」
「それが わかりません。」
「何をしているんだ。草の根分けても探し出せ。」
「手配書を送れ、この世界、幻想郷全体で探すんだ。カメラにも引っかからないなら
 奴は幻想郷に居る可能性が高い。」
「発見次第身柄を押さえろ、生かして捕まえるんだ。」
「奴の家族は?」
「妻とは死別、娘が一人しかし」
「しかし なんだ?」
「行方不明です。会社の記録には15年前と書かれています。」
「そいつも死んだのではないのか?」
「いえ、エーリッヒは娘の姿を摸した人形を開発しています。 名前はヴィヴィット」
「ヴィヴィット?」
「現在 ヤクモに配属されているアンドロイドのようです。」
「なんだそれは。」


「ヤクモとカクタスカンパニーの協力関係を洗い出せ。金の流れもだ。」
「ヤクモへカクタスカンパニーの関連会社 トンネル会社などからの資金流入はなし」
「いえ、15年前にあるプロジェクトで参加している企業がカクタスカンパニーの前身にあたります。」
「無関係じゃないと。」
「15年前に一体何があったんだ。」


国家安全保障局 通称NSA(National Security Agency)は米国防総省諜報機関である。
八雲商事がBB(Big Brother)と呼ぶこの組織は諜報活動を行い米国の対外政策に大きな影響を与えている。
予算はCIAの三倍とも言われ、職員数は世界で数万はいるとされる。


彼らと幻想郷の繋がりは深い。電子諜報システム「エシュロン」は天狗の諜報ネットワークをモデルに
開発された。天狗たちは数十人集まることで風評を集めるネットを構築できる。
これを電脳で全文検索することで、誰が何処で何をしているのかをはじき出すことが可能である。


妖怪が多額の資本を持っているのはNSAが決して無関係ではないことを示す。
そもそもNSAの持つ基礎理論が妖怪のものであるからだ。 正確にはその妖怪達は月の技術を持ち出したとも
言われている。 それは第一次月面戦争の最大の成果物とも言われている。



片眼に義眼を埋め込んだ初老の男が静かに語りかけた。
「カメラの影響が及ばない地霊殿とは考えたな、ミスターアマカス。」
「NSAがここに気づくのはしばらく掛かるでしょう。そうですよねミスコメイジ。」
甘粕が目を向けた先には笑みを浮かべる巨大な目玉を摸したオブジェを持った娘の姿があった。