□月 ●日  No1344 輸送の切り札


倉庫に届くはずの商品が酷く遅れている。
紛争地域やら、自然現象などの影響で商品がうちの倉庫に届いていない。
いくら八雲商事といえど、商品が倉庫に届かなければ幻想郷に送り届けることはできないのである。


某所で発生した噴火の影響で飛行機がなかなか飛ばないからだそうだ。
しかし心配はいらない。うちの会社にはとっておきの切り札があるのだ。


それが天狗の緊急配達便である。
運行速度はほぼ飛行機と同等であり申し分ない。
一応法律に則った運用方法をとるので、直接配達ではなく、一度空港へ降り立ってから
きちんと税関手続きを経て我々の倉庫に届く。


荷物寸法は1パレットまでと制限が多いが、スペルカードの弾幕扱いで格納するので
天狗にとっては重量を気にしなくて良い分経済的だ。
理論上はもっとたくさん輸送できると思うのだが、発展途上のカードのため
万が一のことを考慮しているのだという。


今日、この天狗の輸送システムを利用する羽目になった。
どうしても紛争地域から商品を取り寄せないといけなくなったからだ。
光学迷彩のオプションを付け、保険も入ったのだが、費用は恐ろしく掛かってしまった。
どう見たって一部商品は商品代よりも輸送費が高い。


従って、うちの会社でもこのやり方は切り札扱いである。
天狗は危険地域を飛行するので当然といえば当然なのだろう。
ちなみに、ワクチンなど人命に関わる配送などもやっており
金に糸目を付けない人がこれを利用することが知られている。


余談であるが、そんな面倒な手段を使わずとも、隙間妖怪の空間跳躍を利用できないのかという
意見をよく聞く。 
それについては空間跳躍がもたらす事故が多いため駄目という意見で一致している。
汚染地域からの輸送などが想定されるため危険だというのである。
その点天狗の輸送システムは天狗が足を踏み入れられる場所という意味で十分合理的だったと
言えるだろう。
とても便利なシステムである。


そういえばうちの会社でも海外出張している人が帰れないと言っていた。
滞在費用は当社持ちなので問題ないが、考えてみると幻想郷も別の意味で紛争地域なので
普段通りと言えば普段通りだったりする。