□月 ●日  No1439 鳥頭に関する備忘録


灼熱妖怪に話の取り次ぎを頼んだらものの見事に忘れられてしまった。
一応危ないと思って、別の妖怪にも取り次ぎを頼んでいたので大事には至らなかったが
それにしても記憶力がたりないにもほどがある。
灼熱妖怪というと、恐ろしいほど記憶力が足りない妖怪として知られている。
少し経つと忘れてしまう。 本を読んだら前のページを忘れてしまうと言った具合だ。


私はこれを三歩歩くと忘れる鳥頭だからだと思っていたが、ちょっと考えると
鳥形の妖怪は寧ろ頭脳労働する妖怪が多いことに気づく。
夜雀は完全に商売をやっている妖怪で、その商売スタイルは小金を稼ぐのに血道を
開けるような商売だし、某仙人は高度な偵察作業を鳥に任せている。
鴉天狗はガセが多いものの頭脳労働をすることが多い。 
種族が知能と結びついているとはとうてい考えにくいことが分かるだろう。


死体運び猫の話では前はもっと記憶力があったらしい。
異変が起こったのは八咫烏との癒合を果たしたからだそうだ。
原因の一端を作ったのはどうも冴月と思って間違いないようだ。


直接本人に聞くのは色々危ないと思ったので、同じようにカミ様の力を借りるような
人間に話を聞いてみる。 具体的には浅間と自称現人神だ。
二人がきちんとした知能を残しているのにはある共通点があることがわかっ
た。


どちらも人格レベルの乗っ取りがないということだ。
通常、巫女いわゆるシャーマンは薬などの力を借りてカミ様を自分に下ろす
すなわち人格乗っ取りを行うことが多い。
薬の力を借りる場合は脳に負荷が大きく掛かる。 記憶力障害など副作用も多く
最悪廃人化するケースすらある。


二人はカミ様を下ろすことができるが、人格乗っ取りを受けずに能力だけ行使することができる。
しかし、灼熱妖怪の場合はどうも人格乗っ取りがかなり強いらしい。
これでは記憶がオーバーロードして自分が体験しているのか夢の中の体験なのか区別が付かなくなる。
我々が寝ている時に見る夢を記憶するのが難しいのと同じ理屈だ。


そんなわけで灼熱妖怪はどうしても様々な行為における記憶が混濁しているものと思われる。
決して彼女のせいでも種族のせいでもない。 最近は乗っ取りの精度が低くなりつつあるらしく
記憶力が吹っ飛ぶ割合が落ちていることも書いておくことにする。


最後に鳥頭という謂われは幻想郷には存在しない。 どうもこれは顕界だけにある謂われのようである。
歴史も浅く、どこかの漫画に書いてあった話がそのまま一般化したもののようである。