□月 ●日  No1666 追跡


私、小兎姫は対細菌装備を携えてある人物を追っている。
その人物は試験用の細菌を自分に感染させ、幻想郷に入ろうと試みている。
その人物の目的は不明だが、一ついえるのはその細菌に感染した
人間も妖怪もただではすまないと言える。


たぶん。


人間は死の間際に幻想の世界の境界を見ることができるという。
その人物も死の間際に幻想の世界を垣間見たのだろうか。
少なくても本人を蝕むウイルスによって彼が力尽きるまで20時間程
それまでに始末する必要がある。


幸いにして本人は市街地を避けて一路、一番の最短距離である
博麗神社に向かっている。もちろん外の世界だ。
この人物がなぜこの場所を知っているかについてはわからない。
しかし夢見で、この場所を示唆された人間は数多くいることは
知られている。


櫻崎に連絡、私が持っている抗生物質を注射すればとりあえずは
命は助かるはずだ。
しかし、相手の逃げ足は速い。周辺地域は封鎖しつつあるが
幻想郷の発覚を防ぐため大量の人数を投入するわけにはいかない。


私はスペルカードを見つめた。いざとなったらこれで本人を始末しないと
ならないだろう。


目標は自動車を降りて、博麗神社の鳥居をくぐるかと思われた。
が、道を外れてなぜか竹林の方へと進んでいく。
仕方あるまい空を飛んで捕獲しようとしたその眼前を、
月ウサギがたっていた。


ああ、ただの炭疽菌ですね。
大丈夫です。これですぐに治りますから。
渡された薬を飲んで目標はその場に倒れ込んだ。



後でわかったことだが、幻想郷にいるウサギがよりによって顕界で
入手できない薬を売ることを思いついてここで薬を売っていたらしい。
顕界なら確実に薬事法違反である。
結局この人物は、単に自分が感染した病気を治すためにこの場所にやってきた
というわけだが、彼がどういう人物かはコンクリートの檻の中で
ゆっくり聞かせてもらうとしよう。