ちょっとした用事で会社の車で出かけていたのだが、
いきなりヒトがぶつかってきて痛みで蹲っている様に見える。
一体何が起こったのかとっさに観たのはドライブレコーダーだった。
そこですべてが分かってこれからの話になる。
運が悪い奴が居る。
脅せばお金が手に入ると思ったのか、だが自分の職業を違う意味で呪うしかない。
普通の人ならこの人物は「ヒト」であり人身事故をしでかしたと思うだろう。
だが残念なことに自分の乗用車に乗っているドライブレコーダーは特別製である。
ぶつかった相手が人間かどうかも判別できるのだ。
残念なことにこいつは幽霊とかの類である。
顕界であっても幽霊は存在するが、もちろん彼らだって健康的で文化的な生活をしたい。
そして生活のためにはやっぱりお金が必要である。幽霊として生活してもそれは同じ。
こいつがどうやって生計を立てているかは一目瞭然だ。
警察に通報しようとすると止めろと恫喝してくる。
住所がないのだから当たり前だろう。
顕界の法律では被害者は"いない"のだ。
だからもう一個の電話で通報もした。この幽霊をどうするかを相談するためだ。
自分のバックには怖い人がいるんだぞと言っていた。
生前はそう言う人がいたのかもしれない。もはやその人が呼んでやってくるのか
どうぞ呼んでくださいと言いたいが止めた。そんなことをしたら目の前の幽霊に
絶望感だけを与えることになるだろう。
警察に連絡しようとすると一生懸命止めに入る。
電話を奪おうとしているが、実は別の電話が繋がったままだ。
電話の相手からはそっちへ行くと言われる。
ある程度押し問答すること数分。しつこいこともあってつい口を滑らせた。
「お前はもう死んでいる」という事実を。
するとこの幽霊は大泣きして、さっきとは違う態度で接してきた。
朝倉たちが到着して事情を話す。 すべては解決したかの様に思えた。
この話は実は一ヶ月前の話である。
今日、その幽霊からなぜか慰謝料を貰った。うちの会社の関連会社を斡旋して貰ったとか。
お金は受け取れないと言って返そうとしたが、とりあえずお札一枚だけ抜いて
それで十分だと言って返しておいた。
まあ、大変だと思うからな。